「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システムの取り込みの重要性に鑑みて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見を共有し相互に支援しているコミュニティです。IT Leadersは、その趣旨に賛同し、オブザーバとして参加しています。同倶楽部のメンバーによるリレーコラムの転載許可をいただきました。順次、ご紹介していきます。今回は、KPMGコンサルティング シニアマネージャー 髙橋直樹氏のオピニオンです。
CIO賢人倶楽部では、CIOの心得の基本として「トップとのコミュニケーションの重要性」を謳っている。経営や事業の先行きにITが大きな影響をもたらすようになった今、CEOやCFOとCIOのコミュニケーションが非常に大事だからだと思う。しかし逆に見れば、基本として謳う必要があるほど難しいとも言える。
何しろCIOは予算や案件の管理、日々生じる様々な問題やトラブルへの対処などで忙しいうえ、IT技術は目まぐるしく変化・進化する。ビッグデータやクラウド、あるいはセキュリティなど次々に登場するIT技術やそれに関わる問題を自らが理解し、そして知らない人に理解してもらうのは並大抵ではないからだ。あらゆる比喩や事例を駆使して説明しても、しっかりと分かってもらえたと思えることはそう多くないのではないか。
ところで辞書で「コミュニケーション」を引くと、「社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達、(生物学)動物個体間での身振り・音声・匂い等による情報の伝達等」とある。しかし長年、コーポレートコミュニケーションに携わってきた筆者としては、情報の伝達を行うだけでは十分なコミュニケーションとは言えないと思う。恥を承知で言えば、筆者自身、過去に何度もコミュニケーション上の失敗をしてきた。実はコミュニケーションで重要なことは『相手の行動を伴う』『意思を正確に共有する』という観点である。
例えば新製品を報道発表するケースを挙げてみよう。開発部門やマーケティング、広報部門、担当役員など多くの関係者によるコミュニケーションプロセスを経て、企業の『想い』を持って発表するようなケースである。しかしいざ発表してみると、当事者側の期待とは裏腹に報道されないか、ごく小さな扱いになってしまうことがままあったのだ。『相手の行動を伴わないコミュニケーション』の例である。
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