IoT(Internet of Things)向けの通信規格といえば、Appleの「HomeKit」やGoogleの「Weave」が知られている。いずれも「スマートホーム」と呼ばれる家庭内のIoT機器を主戦場としたもので、すでに製品ベースでの競合が始まっている。この2社に限らず、IoT関連で標準化を進めるの多くの団体が米国を中心に設立されている。Iotは米国を中心に回っているといっても過言ではない状況だが、これに異を唱える団体がある。それが欧州に本部を置くIP500 Allianceだ。唯一、日本にも支部を置くIoT向け通信規格の標準化団体で、2015年10月28日、本部のHelmut Adamski CEO兼会長が来日し、その取り組みを語った。
AppleのHomeKitは、iPhoneやiPad、iPod Touchなど、iOS搭載デバイスをメインコントローラーに据えたスマートホーム規格。家電や照明、鍵などをスマートデバイスで管理できるというもので、照明やサーモスタット、ドアロックなどのHomeKit対応製品がサードパーティーから発売されている。
対するGoogleのWeaveは、Androidから派生したIoT向けOSである「Brillo」搭載機器同士をつなぐための無線通信規格だ。2014年に買収した、IoT対応サーモスタットメーカーのNestの開発チームが手掛けたもので、メッシュネットワークの「Thread」に対応しているのが特徴となっている。
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この点から、Adamski氏は「IP500と最も近く、競合関係になりうる規格はWeaveだ」としている。というのも、IP500そのものが省電力メッシュ無線規格であるからだ。メッシュネットワークとは、通信機能を持った「モノ」同士が相互に通信を行い、網の目(メッシュ)状に通信ネットワークを構成する技術。「基本的には、競合して規格争いをするものではない」としながらも、Googleの動きには注視しているという。
IP500 Allianceは、2005年に設立された、IoT関連組織では老舗といえる組織だ。本部をドイツに置き、同国の産業政策「Intustrial4.0」とも密接に関係している。すでにDKE(ドイツ電気技術委員会)からもIoTの標準規格として認められており、世界への影響は大きいという。
現在同アライアンスが発表している「IoT3.0」は、監視カメラや侵入検知システム、煙探知機、緊急避難装置といった「セーフティ&セキュリティ」分野をターゲットにしたものだ。ここでの成功を糧にして、「スマートシティ・グリッド」「スマートハンドヘルド&ウェアラブル」「スマートアfシリティ&ホーム」の各分野にターゲットを広げていく計画だ。
すでに設立10年が経とうとしているIP500 Allianceだが、1企業で進められているHomeKitやWeaveと比べるとスピード感で劣るのは否めない。欧州を中心とした数多くの企業が標準化策定に参加していることが理由の1つと考えられるが、その分日本企業にも、標準化でイニシアティブを取るチャンスが残されているといえる。
2015年2月には、「IP500 Alliance Japan」を立ち上げており、日本での活動も開始している。日本からの参加企業はオムロン、豊田通商、富士通、半導体製造メーカーのローム、システム開発ベンチャーのスタビリティの5社。