[調査・レポート]

【CES2016】コネクテッド最前線がわかる―4つの注目テーマを紹介

2016年1月22日(金)杉田 悟(IT Leaders編集部)

2016年1月6〜9日(現地時間)、米ラスベガスでCTA(Consumer Technology Association:全米民生技術協会)主催のCES2016が開催された。かつて、ブルーレイDVDやプラズマTV、IP TVなど最新家電の発表の場であったCESだが、近年、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の登場などにより、その様相は劇的に変化した。現在では、ITやネットワークと家電や自動車を連携させたIoT関連の最新製品に触れることのできる展示会へと変貌を遂げている。来たるべきIoT社会に備えて、情報システム担当者も注目しておくべきトピックが目白押しとなっていた。

 かつてCESは、世界の家電メーカーが新製品を競って発表する家電業界の大型イベントとして注目されていた。現在では、主催のCEA(Consumer Electronics Association:全米家電協会)がCTA(Consumer Technology Association:全米民生技術協会)へと名称変更し、家電だけでなく、自動車や時計、ロボットなど幅広い製品が展示されるようになってきた。例えばコネクテッドカー、スマート家電、スマートウォッチ、スマートウェアなど、IoTあるいはコネクテッドデバイス、スマートデバイスとして注目されている分野のものだ。

AIは重要なカギとなる

 IoTの重要アーキテクチャーといえばAI(人工知能)だ。トヨタ自動車は米国に設立した人工知能研究新会社「Toyota Research Institute(TRI)」に参加する主要メンバー、アドバイザリー・ボード・メンバーを、CES2016のプレスカンファレンスで明らかにした。同社のブースでは、そのAI技術を使った「ぶつからない」を学習する人工知能搭載自動運転車のデモや、地図の自動生成デモなどが行われた。

 GPU(Graphics Processing Unit)のトップベンダーであるNVIDIAも、今回のCESでAIを強力に打ち出していた企業の一つだ。今回展示された多くのメーカーの次世代カーに搭載されていたという同社の最新GPUが「Passcal」。カンファレンスでは、このPascal搭載の自動車用人工知能「DRIVE PX2」が発表された。同社はGPU技術を活用してディープラーニングの高速演算処理を実現しており、自動運転など高性能な人工知能エンジンが求められる自動車業界向けAIの開発を進めていることを強力にアピールした。

 人工知能といえば、IBMの人工知能「IBM Watson」を搭載したソフトバンクのコミュニケーションロボット「Pepper」の世界展開も発表されている。PepperがWatsonを搭載するということは、言い換えればWatsonの新たなユーザーインターフェース(UI)としてPepperが採用されたということになる。コネクテッドデバイスは、新たなUIを生み出し、新たなUX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザー体験)を提供する。

UI、UXが民生技術の中核

 カシオが発表したSmart Outdoor Watch「WSD-F10」は、常時現在時刻を表示するという腕時計本来の使い方にこだわったスマートウォッチ。方位計測、高度計測、気圧計測といった多機能を装備しているが、時刻は長針、短針、秒針をデジタルで常時表示、アナログ時計のUIをあえて再現している。

 しかしCES2016では、UI、UXの主役は自動車だった。Mercedes-benzやVolkswargenは、コクピットをフルデジタル化したデジタルコクピットを展示、BMWはカメラ機能と車内ディスプレイを組み合わせたミラーレス機能「i8ミラーレス」を公開した。

コネクテッドの新たなインフラ

 自動車は、外部と連携する「コネクテッドカー」となることで、更なる新たなユーザー体験を提供する。Appleの「Apple Carplay」とGoogleの「Android Auto」は、iPhoneやAndroid端末とナビゲーションなどの車載システムを連携させるシステム。スマートフォンの機能を車載端末から、あるいは車載端末の機能をスマートフォンから操作できるようにする。Apple Carplay対応機種はFord Motor、Audi、Chevrolet、Lexusなど、Google Auto対応機種はKenwoodなど、そのほか、両方に対応した機種も多く展示されていた。

 FordはAmazonとの提携も発表している。Amazonの家庭用音声認識装置「Echo(エコー)」と自動車を連携させるというものだ。Echoは、iPhoneの「Siri」やAndroidの「Google Now」、Windowsの「Cortana」のような音声認識機能を提供する専用端末。音楽やラジオを聞いたり、質問に答えてくれたりというコミュニケーション機能を搭載しているが、Fordとの連携では、自宅からEchoを介してフォード車のエンジンの始動や室温調整、ドアロックの開閉、燃料の状態確認などが行えるようになるという。

 日産自動車は、電気自動車(EV)「日産リーフ」のテレマティクスシステムにマイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を採用することを発表している。そのほか、コネクテッドとは異なるが、General MotorsがシェアードビジネスベンチャーのLyftとの提携を発表するなど、自動車メーカーとITベンダーの蜜月関係は、今後一層深まっていきそうだ。

プロセサ2強もIoT狙う

 CES2016には、これらコネクテッド製品のベースとなる、プロセサレイヤーの主要プレーヤーも参加している。スマートフォンなどのモバイル分野でトップに立っているQualcomm、モバイルではQualcommに王座を譲ったものの、PCではまだ圧倒的な地位を占めているIntelの2社は現在、IoT分野での覇権争いに忙しい。

IntelのBrian Krzanich CEOは組込用ボード「Curie」を紹介した(写真提供:CTA)

 Qualcommは、スマートフォン向けトップのプロセサ「Snapdragon」の最新版である「Snapdragon820」、自動車向け製品の「Snapdragon 820A」をはじめとして、IoTの様々な製品へのSnaodragonの適用をアピールした。一方のインテルは、超小型の組込み用ボード「Curie」を公開した。プロセサ、フラッシュメモリ、SRAM、Bluetooth通信機能、6軸センサーを搭載しており、従来のIoT用センサーよりも高機能な、スマートセンサーとしての普及を狙っているようだ。

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