スーパーマーケット最大手の米ウォルマート(Wal-Mart)が2016年1月、突如として269店舗(うち米国内150店舗)を閉鎖すると発表した。その背景には、食料品の販売・宅配サービスを提供するスタートアップの台頭がある。これまでも多くの書店や旅行代理店などが閉店に追い込まれたように、ネット化/デジタル化の勢いはとどまるところがないようだ。
スーパーマーケットの王者である米ウォルマート(Wal-Mart Stores、商標名Walmart)は、米アーカンソー州で1962年に創業した食料雑貨店である(図1)。時代の波に乗って成長を続け、1992年に米国最大のスーパーマーケットになった。そして2001年に世界の企業番付第1位に躍り出て以来、その座をずっと守り続けている。
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同社の2015年度の売上高は4856億ドル(約58兆円)。全世界に1万1600の店舗を持ち、220万人の従業員数を抱えている。そのうち米国内に4600店舗、従業員140万人が働いている。2005年には日本の西友ストアー(現・西友)を傘下に収めた。
そのWal-Martが2016年1月、突如として269店舗(うち米国内150店舗)を閉鎖し、1万6000人(うち米国内1万人)を解雇すると発表した。同社の売上高は順調に伸びているように見えるが、実は売上成長率は、2008年のリーマンショック以後、立ち上がりをみせたもの右肩下がりに陥っている(図2)。
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増える大手食料品スーパーへの挑戦者たち
Wal-Martの店舗閉鎖とは対照的に、多数のスタートアップがベンチャーキャピタル(VC)の投資を受けてサービスを開始しているのが、食料品の販売・宅配だ(表1)。街中の小規模な食材店やレストランは、そうしたサービスが「自分たちだけでは集客できないお客を集めてくれる」として大歓迎している。
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料理を指定して注文すると、それに必要な食材一式を揃えて宅配してくれてサービスもある。Blue ApronやHelloFreshなどだ。注文主は、届いた食材をレシピに沿って調理すればよい。これを料理のサブスクリプションサービスと呼ぶ。サービス料金は、一定額以上を注文すれば無料な場合と、1件ごとに請求する場合とがある。
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食料品の宅配に参入するのはスタートアップだけではない。Amazon.comは2007年から、生鮮食品の配達サービス「Amazon Fresh」のベータテストを始め、2013年からはシアトルとロスアンゼル、サンフランシスコなどの主要都市で本格的にサービスを開始した(図3)。Amazon Primeサービスの一環で、年間299ドルの会費の中に配達料が含まれている。
Googleは、大手スーパーのWhole Foods、Costco Wholesaleと提携し、食料品と日常雑貨品の宅配を始めた。配車サービス大手のUber Technologiesは、地元レストランと契約し料理の宅配サービス「UberEATS」をサンフランシスコとニューヨークで始めている。スマートフォンを使ってピザや寿司、サンドイッチなどを注文すると、該当するレストランから受け取った料理が自宅に届く。
●Next:ディスラプターへの反撃を開始したウォルマート
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