UberやAirbnbといったシェアリングエコノミーが話題だ。こうしたサービスの広がりが、定職には就かず必要に応じて働く人々を増やしている面もある。さらに新しいビジネスモデルだけに、実社会との整合性を図るためには課題も少なくない。ビジネスの基本である“信頼”を重視する動きも出てきた。
当面使わないか、余っているリソースを複数人に(ある時点では1人に)順次提供して共有利用する−−。こうした形態のシェアリングエコノミー(Sharing Economy)の勢いが止まらない(表1)。
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こうした新しいサービスビジネス分野へのベンチャーキャピタル(VC)の投資も増え続けている。2016年6月までに、米Airbnbには23億9000万ドルが、米Uber Technologiesには141億1000万ドルが、米Lyftには20億1000万ドルが、それぞれ投資されている(図1)。Lyftには2015年末、日本の楽天と自動車メーカーの米GM(General Motors)も投資した。
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モノの提供からサービスの提供へと進化
シェアリングエコノミーの先駆けは、2000年に生まれたカーシェアリングサービスのZipcarである。特定の駐車場にZipcarが所有する車を数台駐車しておき、Webで予約を受け付けて数時間(あるいは数日)、クルマを必要とする予約者に貸し出す。従来のレンタカーが日単位でしか車を借りられないのに対し時間単位で借りられるうえ、レンタカーショップにまで出向く必要がない。いわゆる「シェアリング・レンタカー」である。2013年にレンタカー大手の米Avis Dollar GroupがZipcarを買収した。
このカーシェアリングを個人が所有する車に適用したのがGetaroundやTuroなどである。Webウェブで予約を受け付けて個人が所有する車を貸す。こうしたサービス方式は、個人と個人(Peer to Peer)を結び付けることから「ピア―エコノミー(Peer Economy)」とも呼ぶ。
個人が登録した物品あるいはサービスを、他の人が購入あるいは利用するやり方は、eコマースで言うC2C(Consumer to Consumer)のモデルだ。古くはオークションサイトのeBayに始まり、大学での教科書貸与サービスのChegg、グラフィックデザインの99designsなど広い分野へ拡大している。Amazon.comのMechanical Turk、TaskRabbitなどは簡単で細かな仕事してくれる人をWebで公募し依頼している。例えば、買い物のレシートの情報(日付、品目、数量、価格、割引、消費税など)をWebページに入力すれば1件当り1~5セントの報酬を支払うといったものだ。簡単な翻訳の仕事などもある。
それが近年では、供給者が提供するサービスをオンライン(特にスマートフォン)を利用して、それを欲する人(受給者)にオンデマンドで結びつけるサービスへと進化している。その代表例が運転サービスのUberやLyftである(関連記事)。車そのものを借りるのでなく、タクシーと同じように車に乗せて目的地まで運ぶという“サービス”を提供するもので「ライドシェアリング(Ride Sharing)」と呼ぶ。
UberやLyftの人気が高い理由は、通常のタクシーよりも乗車料が20%以上安く、しかも車内が綺麗なことである。米国で座席が擦り切れているイエローキャブに乗った経験がある方もいるはずだ。Uber/Lyftの車は、運転手が所有する自分の車(日本のシロタクと同じ)なので綺麗である。筆者は夏の暑い日に、客席のシートポケットに水が入ったペットボトルを用意してくれていた車に乗ったこともある。
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