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[シリコンバレー最前線]

Uber、Airbnbで広がる“オンデマンドエコノミー”、既存のビジネスモデルを変革

2015年9月17日(木)山谷 正己(米Just Skill 社長)

必要なときに、必要な商品やサービスを、必要な場所に届ける−−。そんな「オンデマンドサービス(OnDemand Service)」が続々と登場している。このオンデマンドサービスを提供するビジネスが、「オンデマンドエコノミー(OnDemand Economy)」と呼ばれ拡大している。モバイル時代の本格化で、オンデマンドエコノミーが既存ビジネスを大きく揺さぶっている。

 米国では近年、表1のようなオンデマンドサービス(OnDemand Service)が話題を呼んでいる。

表1:話題になっているオンデマンドサービスの対象と内容表1:話題になっているオンデマンドサービスの対象と内容
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 これらのサービスはすべて、スマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスからオンデマンドでサービスを要求できる。配車サービスであれば、客がいるところまで運転手が車を運転してきて目的地に運んでくれる。駐車サービスであれば、車を停めたい場所の近辺で空きがある駐車場を探して予約してくれる。

 宿泊サービスであれば、通常の民家で余っている部屋を貸してくれる。しかも朝食付きだ。特に若い旅行者に人気がある。海岸近くの家であれば夏の期間に、庭とシャワーと台所だけを貸し出しもする。借り手となる家族は、テント持参で出掛け、その家の庭でキャンプ生活を楽しめる。

 こうした、デマンドに応じて即座にサービスを提供するビジネスのことを「オンデマンドエコノミー」と呼んでいる。一般人が所有する資産を不特定多数の利用者に提供するビジネスの場合は特に「シェアリングエコノミー(Sharing Economy)」と呼ぶこともある。

「Mobile First」の浸透がオンデマンドエコノミーを創出

表2:主なオンデマンドサービスとベンチャーキャピタルの出資額 (CrunchBaseのデータを基に作成)表2:主なオンデマンドサービスとベンチャーキャピタルの出資額(CrunchBaseのデータを基に作成)
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 人々はモバイルデバイスを手にしたことで、場所と時間を意識することなく、他人の都合に拘束されることなく生活できるようになった。すなわち、従来の顧客と商品/サービス提供者との立場関係が逆転しつつある。ここが、新しいビジネスを考える際に「Mobile First(はじめにモバイルありき)たれ」と強調される所以である。

 主なオンデマンドサービスと投資額を、分野ごとに表2まとめた。ここで注目したいのは、サンフランシスコで生れたオンデマンドサービスが多いことである。優秀なIT技術者が周りにいることと、適正規模の人口を抱える都会だからだ。

 オンデマンドかつシェアリングサービスの元祖が「Airbnb」である。社名後半の「bnb」は「bed and breakfast」の略であり、旧来からあった寝床と朝食を提供する、いわば民宿のサービスだ。それをAirbnbは、Web上で貸し手と借り手を世界規模でつなげたというわけである。

「Amazonification」から「Uberrization」へ

 数あるオンデマンドサービスの中で特に注目されているのが配車サービスのUber Technologiesだ。Uberのような新しいオンデマンドまたはシェアリングのサービス方式を「Uberization(ウーバリゼーション)」と呼ぶほどである。ちなみに、Amazonがeコマースを席巻し始めたことは「Amazonification(アマゾニフィケーション)」と呼んでいた。

図1:AirbnbとUberへのベンチャーキャピタルの投資額図1:AirbnbとUberへのベンチャーキャピタルの投資額
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 2009年の創業以来、Uberは多数のベンチャーキャピタルから計100億ドル(約1兆2000億円)の投資を受けている(図1)。投資元のなかには、GoogleやMicrosoft、百度(バイドウ)、Tata Capitalなどがいる。さらに、Amazon.comのCEOであるJeff Bezo氏も投資している。同様の配車サービスを展開するLyftには2015年3月、ベンチャーキャピタル4社に混じって、楽天も投資した。

 Uberが提供するモバイルデバイス用アプリケーションでは、地図上にGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)により自分の居場所が表示される。4人乗りや6人乗りといった車のタイプを指定すると、近辺にいるUber契約車のアイコンがリアルタイムで現れる。目的地を指定すれば、所要時間と概算料金とともに、運転手の顔写真と名前も表示される(図2)。

図2:Uberのモバイルアプリケーションの画面例図2:Uberのモバイルアプリケーションの画面例
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 利用料金は走行距離と時間に比例する。ただ、基本単価は地域によって異なる。先日、筆者がシリコンバレーの某所で午後8時に利用したときは、3.3kmの距離を5分20秒で走って、料金は6ドル33セント(約760円)だった。これにはチップが含まれている。この料金は予め登録したクレジットカードに課金されるため、乗客と運転手の双方は現金を扱う必要がない。ここが大きな安心につながっている。

 Uberの運転手は、Uberと契約を結んだうえで自分の車を使って、運転サービスを提供するコントラクター(契約業者)である。仕事をする時間を自分で管理できるという良さがある。Uberの運転手のうち、フルタイムで働いている人が38%、別にフルタイムの仕事を持ちながら空いた時間にUberの運転手として働いている人が31%だ(Bloomberg調べ)。先日、筆者が利用したUberの運転手は、「昼間は会社勤めをしているが、3人目の子供が生まれたので、退社後はUberで副収入を稼いでいる」と言っていた。

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