Systems of Engagement(SoE)のアプリケーションにおいて極めて重要なのがレスポンス性能である。一方で、SoEのアプリは外部のAPIを呼び出したり、さまざまなソフトウェア部品を駆使して構築される傾向があるので、適切に性能を監視するのは容易ではない。それを可能にするツールが登場した。「Instana」というアプリケーション性能監視ツールだ。
アプリケーションパフォーマンス(性能)監視(APM)という概念や、それをサポートする製品やサービスがある。メインフレームなど昔からある社内向けシステム用の性能監視ツールのことではなく、外部の消費者や顧客向けのアプリケーションに関するものである。よく「3秒過ぎると半数以上が利用を諦める」と言われるように、こうしたアプリケーションではレスポンス性能がとても重要だからだ。
日本ではまだ一部のネット企業やクラウドサービス企業などに導入が留まるが、米国ではAPMとして確立した分野を形成している。よく引き合いに出して恐縮だが、例えば米GartnerのMagic Quadrant for APM(2015年11月)には、15の製品がリストされている(図1)。そんなAPM分野において、2015年にまったく新しいベンチャーが登場した。「次世代アプリケーションのための次世代モニタリング」を標榜する社員23人の米Instanaである。
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「なぜ創業間もない、従って実績もないはずの、小さな企業を取り上げる?」と思われるかも知れない。理由の1つは、米Gartnerが発表する「Cool Vender 2016」のAvailability and Performance部門にリストされたこと。加えて同社が創業した経緯や、同社の言う次世代アプリケーション、同社の企業スタイルを聞いたところ、デジタルビジネス時代の1つの断面を示していると思えたからだ。どういうことか、ざっと紹介しよう。
Instanaの創業メンバーは、有力APMベンダーである米AppDynamics(http://it.impressbm.co.jp/articles/-/11403)の経営や技術に関与していた人たち。その1人が話を聞いたPete Abrams氏(InstanaのCOO)であり、同氏によると2008年創業のAppDynamicsでさえ、最新のアプリケーションには技術的に対応しきれないのだという。
どういうことかというと、例えばAppDynamicsではトランザクションに着目してプログラムコードにチェック用のコードを自動で埋め込み、アプリケーションのパフォーマンス──プロセスの処理時間やレスポンス性能など──を1分単位で監視する。これにより1〜2%のオーバーヘッドが生じてしまうが、問題ないレベルに思える。
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しかし、Abrams氏は次のように問題を指摘する。「今日のアプリケーション開発では、アジャイルやDevOps、継続的デリバリーが広く受け入れられている。それを支えるのはクラウド、コンテナ技術やマイクロサービスであり、これらをベースとしたアプリケーションは1分単位では粒度が荒すぎて、つぶさに挙動を把握できない。このようなことが起きるのは、ここ数年の間にアプリケーションを構成する基盤技術が変わったからであり、それ以前から存在する(AppDynamicsをはじめとする)APMツールが対応できないのは当然だ」。
●Next:Instanaは従来のAPMの欠点をどんなアプローチで克服したのか
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