[ビジネスを変える3Dプリンターの基礎知識]

3Dプリンター導入に向けた考慮点と、これから

2016年10月5日(水)David Miklas(デイビッド・ミクラス、チェコ共和国のbe3D CEO)

これまで、3Dプリンターの技術や、3Dプリンティングが製造業や学習現場に与えたインパクトについて紹介し、3Dプリンティングによるビジネスが既に始動していることをお伝えしてきました。今回は、3Dプリンティングに取り組む際に企業が考慮すべき点と、3Dプリンティングの“未来”について考えてみます。

紙のプリンター同様の運用支援環境が必要に

 これらの考慮点において、3Dプリンターのビジネス利用が進めば進むほど、さらなる技術革新が求められるのは、プロセスの効率化やワークフロー対応、3Dプリンターの集中管理と使用率の最適化の領域です。

 例えば、3Dプリンターで作った製品を販売する企業であれば、高品質だが高価な3Dプリンターの使用は、最終製品の出力に関与する従業員だけに制限し、プロトタイプを作成する従業員には安価な3Dプリンターだけを使うように制限したいと考えるでしょう。同様に、機密性の高いファイルやモデルに関与する従業員には、大量生産する交換部品や小型装置の作成に関与している従業員よりも特別に制限したアクセス権を与えたいはずです。

 このような要件は2Dプリンター、すなわち紙のプリンターの要件として求められてきました。紙のプリンターも当初は限られた人しか利用/操作できませんでしたが、ユビキタスな装置として企業ネットワーク上でオープンにアクセスできるようになって以来、アクセスが制限されるようになりました。今日では、特定の部門や個人にのみ専門性が高いカラープリンターの使用を許可し、一般従業員にはモノクロ印刷だけを使わせるようにコントロールしている企業は珍しくありません。

 また3Dプリンティングのワークフローにおいては、まだ一握りのベンダーしか製品を提供していません。例えば、Ysoftでは、3Dプリンティングのワークフロー管理と会計システムを統合したソフトウェアを開発・販売していますが、同様のソフトウェアを販売している会社は現時点では、ありません。3Dプリンターメーカーのほとんどが、ソリューションプロバイダーらがワークフローソフトウェアなどを開発するのに必要なSDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)を提供できていないからです。恐らく3Dプリンターメーカーは間もなく、SDKの必要性を認識することでしょう。

 IPを保護するためにデジタルファイルを集中管理し他のビジネスプロセスと統合するためのソフトウェアも、これから成長する分野です。3Dプリンティングのプロセスを全社レベルのプロセスとして統合することが、企業のビジネス戦略にとって非常に重要になってきており、多くの企業が求めるようになっていくからです。

 これも2Dプリンターの世界で起こってきたことです。多くの企業は今、複数メーカーのプリンターを導入しています。M&A(企業の合併・買収)の結果だったり、特定のメーカーだけに依存したくないというポリシーによったりするものです。3Dプリンターも同様に、1企業が複数メーカーの3Dプリンターを導入していくことになるでしょう。3Dプリンターの技術革新が激しい現在では、新しいプリンターと材料が続々と出現し、企業は何ができるのかを実験しながら複数メーカーの製品を購入せざるを得ないだけに、3Dプリンターの集中管理ソフトウェアは不可欠でしょう。

3Dプリンターの技術革新がソフトウェアの充実を求める

 3Dプリンティングの技術は、すでに30年以上の歴史を持っていますが、ビジネス現場での新しいイノベーション(変革)が多数登場し始めたのは最近のことです。そうした中、ヘルスケア、食品、ファッションの3業界は、3Dプリンティングによる継続的なイノベーションを観察できる特筆すべき業界です。

 例えば、医療や食品の業界では、汚染や殺菌に関連する厳しい規制を遵守するために3Dプリンターの活用が期待されており、そのための技術革新が始まっています。ファッション業界では、生産時間をより迅速にするために3Dプリンターを使っており、コストを削減しながら生産速度をさらに高められるような革新が求められています。

 今後も、プロトタイピングと少量生産が駆動要因であるビジネスを中心に、より高品質、新しい素材への対応、高速化の技術革新が進むでしょう。しかし、繰り返しますが、3Dプリンティングによるビジネスイノベーションにおいては、種々の関連ソフトウェアやソリューションの充実が不可欠です。当社も3Dプリンターの技術革新動向をとらえ、種々の企業と協業しながら、3Dプリンティングビジネスを前進させる多くの機会を生みだしたいと考えています。本連載が、みなさまの3Dプリンティングビジネス成功の一助になれば幸いです。

筆者プロフィール

David Miklas(デイビッド・ミクラス)、チェコ共和国のbe3DのCEO

David Miklas(デイビッド・ミクラス)
プロ仕様の3Dプリンターを開発するチェコ共和国のbe3DのCEO。プロトタイプの製作ニーズに応えるべく2012年秋に3Dプリンター事業を開始、2014年のSilicon Valley Startup CupではTOP12に選ばれた。プリントマネジメントソフトウェアの開発会社であるチェコのY Soft傘下に入ってからは世界で事業を展開している。be3D創業前は3Dプリンターを使ったプロトタイプ制作などを手がけるTisknu3Dや、ITアウトソーシング企業のDO-ITを創業しCEOを務めた。

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