これまで、3Dプリンターの技術や、3Dプリンティングが製造業や学習現場に与えたインパクトについて紹介し、3Dプリンティングによるビジネスが既に始動していることをお伝えしてきました。今回は、3Dプリンティングに取り組む際に企業が考慮すべき点と、3Dプリンティングの“未来”について考えてみます。
前回ご紹介したように、3Dプリンティングは製造現場に向けて、高速なプロトタイピングとコスト削減を実現し、製品のデザインから市場投下までのプロセスをスピードアップできることを紹介しました。「ならば3Dプリンティングに取り組もう」ということになるかもしれませんが、3Dプリンターを企業が導入する際には、考慮すべき点がいくつかあります。
導入検討時に、まず目が向くのは、どの3Dプリンターを導入するかでしょう。第1回で紹介したように、3Dプリンターには、その形成技術によっていくつかのタイプに分かれます。それぞれの技術の特色は、3Dモデルを作成するための添加剤レイヤーにあります。そのほか、価格や印刷速度、プリンターの大きさ、使い勝手、提供されるサポート/メンテナンスサービスなども気になります。
ですが、これらの項目は簡単に調べられます。自社のニーズと比較しながら決めれば良いのです。そのためには、3Dプリンティングを自社ビジネスにおいて、どのように使用するかを調査・決定しておかねばなりません。どの領域で最大の価値が得られるかを特定することによって、3Dプリンターの、どの機能や能力が重要かは自ずと決まってきます。
3Dプリンター導入時の考慮点はスペックだけではない
企業が3Dプリンティングに取り組むためには、3Dプリンターのスペックよりも、もっと深く考慮すべき長期的な要因があります。なぜなら、3Dプリンティングに取り組むことは、製品の設計データなど機密性の高いデータをネットワークごしに扱う頻度が高まることになりますし、印刷結果は単に紙の文書ではなく製品そのものでもあるからです。以下、スペック以外の考慮点を挙げてみます。
考慮点1:従業員の安全性
3Dプリンティングに携わる従業員のための安全性は重要な問題で、考慮すべき点がいくつかあります。第1は、高温なプリンタノズルへの配慮です。多くの3Dプリンターは、プラスチックを高温で溶融しながら、重いノズルを高速で左右に移動させることで、層の上に層を積み重ねて印刷していきます(動画)。さらに、この動作は、3Dモデルのサイズと複雑さに応じて長時間続く場合もあります。
動画:3Dプリンターによるランプシェード印刷の様子を高速再生したもの
このような3Dプリンターの運転上の理由から、従業員の安全を守るには密閉したプリンターチャンバーの設置が望まれます。多くの密閉式プリンターチャンバーは、印刷の進行状況を確認するための窓と、リモート監視のためのWebカメラが設置されています。3Dプリンターの側にも、チャンバーのドアが開かれるたびに自動停止し、ドアが閉じられれば自動的に印刷を再開するという機能が必要です。
第2は、印刷材料の考慮です。熱可塑性樹脂は、第1回で紹介したように、最も安全な選択肢だと言えます。コーンスターチベースの生分解性材料で有害性も有毒性もないからです。もちろん、用途によっては異なる材料が望まれるケースがあります。その場合は、監査や規制の対象となる廃棄物処理や、取り扱い手順を検討しなければなりません。
考慮点2:印刷物のセキュリティ
しばしば見落とされがちな考慮点として、3Dプリンティングによって最終的に完成したモノのセキュリティがあります。高度な企業秘密である自社デザインや、お客様のデザインを取り扱っている企業にとって、生成物を勝手にのぞき見られない安全な場所に保管することはとても重要です。誰もが3Dプリンターから印刷物を持っていけるようになっていませんか?ドアはロックされ許可された印刷物の所有者だけが開けるようになっているでしょうか?CADファイルのセキュリティについて、後段でお話します。
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