[ビジネスを変える3Dプリンターの基礎知識]

3Dプリンター導入に向けた考慮点と、これから

2016年10月5日(水)David Miklas(デイビッド・ミクラス、チェコ共和国のbe3D CEO)

これまで、3Dプリンターの技術や、3Dプリンティングが製造業や学習現場に与えたインパクトについて紹介し、3Dプリンティングによるビジネスが既に始動していることをお伝えしてきました。今回は、3Dプリンティングに取り組む際に企業が考慮すべき点と、3Dプリンティングの“未来”について考えてみます。

考慮点3:ワークフローと既存のプロセスとの統合

 3Dプリンティングのメリットを享受する生ためには、3Dプリンティングのプロセスを効率的に構築することが重要です。多くの場合、複数の3Dプリンターを導入し、それらを会社のネットワークを介して利用可能にするだろうからです。これら複数の3Dプリンターを効率良く稼働させなければなりません。そのため、この考慮点は、3Dプリンターでの印刷物を販売する企業の場合は、より重要であり、3Dプリンティングサービスを提供する企業の場合は、さらに重要になります。

 3Dプリンティングの効率を高めるには、デザイン作成から完成品に至るまでの工程の順序、すなわちワークフローを確立し、プロセスの標準化を進めます。米調査会社のガートナーが最近出した報告書『Innovation Insight for 3D Print Workflow Software(2016年8月12日、Document #G00309087)』によれば、「製造業やサービス業者、政府や教育機関が3Dプリンターを十分に活用するためには、ワークフローソフトウェアは、なくてはならない重要なツールである」としています。

 3Dプリンティングのためのワークフローソリューションとしては、現在のプロセスに適合し組織のワークフローに沿って稼働する、あるいは、提供される機能によって組織のワークフローが向上するような仕組みを選ぶ必要があります。具体例として、クライアントやプロジェクト番号ごとに各ジョブの時間と材料を追跡・記録し3Dプリンティングのコストレポートを生成/配信する機能が挙げられます。こうしたレポートは、効率的な財政運営に必要な正確な課金を実現するために、経理部門が使用できる形で既存プロセスに組み込まれる必要があります。

考慮点4:知的財産の保護

 3Dプリンティングでは、コンピュータファイルから同一部品をいくつも複製できます。それだけに、IP(Intellectual Property:知的財産)の保護を懸念する企業や、自社のIPをライセンス供与する機会を模索している企業に、新たな課題をもたらします。

 例えば、3Dプリンティングによって作成した部品が、顧客企業のビジネスに利用されている場合は、特許と、その他の法的問題と同様に、3Dプリンター上でスペアパーツを制作する際のライセンスや製造に関する条項も考慮する必要があります。その部品に対して、メーカーの品質基準とパフォーマンス仕様を満たす必要があるかもしれません。不良品が人命に関わるような事故につながる場合は特に注意が必要です。

 同様に、企業が新しい3Dプリンティング部品の生産を開始し販売する場合は、デザインや3Dプリンティングのプロセスを保護するための対策も不可欠です。 3Dプリンティングに関するガバナンスモデルは、企業が現在、内部文書の作成と取り扱いに関して策定・実施しているものと同じガバナンスモデルを作成することをお勧めします。もちろん、企業内でCADのデザインや3Dファイルが作成され、業務の流れに沿って、従業員からベンダー、顧客へと次々と転送される過程において、これらのファイルを安全に管理する方法を含んでいなければなりません。

考慮点5:ビジネス変革のための計画

 3Dプリンティングを企業の長期的な成長のための方向性やビジネスモデル、戦略に大きな価値を持っていると考えるならば、必要になる戦略的な資源を洗い出し、企業にもたらす価値とインパクトを特定しなければなりません。

 3Dプリンティングに取り組めば、物理的世界とデジタル世界の境界は、あいまいになっていきます。それを前提に、製品開発や設計、運用、およびITのそれぞれに必要なスキルを考えます。プロセス変更により、ビジネス能力や、プロセス、情報、技術、人へのインパクトも理解する必要があります。例えば、交換部品をオンサイトで印刷できれば、まれにしか必要とされない部品などは大量在庫は不要になります。

 そして、潜在的なインパクトを最大限に活用するためには、現在の研究開発から製造、サプライチェーンまでの各プロセスを再考しなければなりません。競合他社の行動や3Dプリンティングの利用方法などを観察し、新しいデザインや製品をもって市場を変える方法や、それによって自社ビジネスにどのような経済的な影響が出てくるのかを理解しましょう。

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