データマネジメント データマネジメント記事一覧へ

[イベントレポート]

バックアップは“保存”から“使う”へ、米VeritasがSDSで挑むデータマネジメント

2016年10月6日(木)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

データ分析で得られた洞察(インサイト)に基づく意思決定でビジネスを成長させようと、各種の取り組みを強化している企業は少なくない。ITベンダー各社も様々な領域からデータ活用に向けたメッセージを発信している。そうした中、バックアップツールベンダー大手の米Veritas Technologiesが「Information Management」を掲げ、SDS(Software Defined Storage)によるデータマネジメントの重要性を訴え始めた。バックアップ大手の同社がなぜ、データマネジメントなのか。2016年9月に開かれた「Veritas Vision 2016」での講演や幹部へのインタビューなどから、バックアップを含めたデータ管理のこれからを探ってみる。

メタデータの管理とOSSコミュニティとの関係強化が争点?!

 新生Veritasの製品ポートフォリオは、最初に挙げたデータの保護、可用性、洞察の3つに分類される。だが現状は、従来製品が持つ機能を分けているため、既存の製品名が3分類に分かれて登場するなど、ラインナップが分かりづらい点は否めない(図6)。現時点のビジネスが既存製品で成り立っているだけに既存顧客を考えれば、それらブランドを一新するのも難しいかもしれない。

図6:新生Veritasの製品ポートフォリオ図6:新生Veritasの製品ポートフォリオ
拡大画像表示

 ただ、開発中の製品を含め、同社が今、データバックアップの中で培ってきたコピーやレプリケーション、スナップショットといった技術を、データの可用性やポータビリティに生かし、ハイブリッドクラウド環境におけるデータコントロールの役割を担おうとしているのは間違いない。そうした製品開発方針の中で、今後の課題になりそうなのが、メタデータの管理とOSSコミュニティとの関係強化、およびインフラ全体を対象にした提案力である。

 まずメタデータは、データの種類や存在場所などを示すデータである。「使いたいときに使いたいデータを届ける」ためには対象データのメタデータを総合的に管理する必要がある。そのメタデータ管理は旧VERITASの原点とも言える技術ではある。ただVeritasの場合、現時点でメタデータの管理主体はNetBackupである。つまりバックアップ対象になっているデータしか管理できないことになる。SDSベンダーとしては今後、NetBackupより上位の層でのメタデータ管理を実現する必要がある。

 一方、OSSコミュニティとの関係強化は、インフラ関連製品を提供する上では、ますます重要になってきている。ベンダー主導で標準化を進める時代が終わり、OSSコミュニティが標準の発信源になってきているからだ。Veritasは今回、コミュニティとの関係強化のためにRed Hatとの協業を強化した。だがアジャイル/DevOpsに対応したSDSを目指すとなれば、Veritas自らのOSSコミュニティへの貢献や、自社製品のOSS化なども検討されることだろう。

 これらの課題はVeritasに限ったものではないが、最初の2点についてCPOのPinczuk氏は「十分に認識しており、具体策を検討している」と答える。インフラ全体を視野に入れた提案力についても、CEOのColeman氏は「2〜3年を掛けて強化を図っていく。Veritasとしてのコンサルティングサービスもあるが、顧客と接するパートナー企業への教育も変えていく」とする。

バックアップを含めたデータマネジメントを再考せよ

 データが企業にとっての資産であると認識が高まった今、「使いたいときに使いたいデータを届ける」という目標は、Veritasだけが掲げるものではない。ストレージ装置ベンダーやSDSベンダーはもとより、ETLツールや各種のデータ管理ツールのベンダーらも同様の目標を掲げ、それぞれが製品ポートフォリオの整理・拡充を進めているのが実状だ。

 利用企業にすれば、各社がどの観点からデータを見ているのかを確かめながら、それぞれの技術や製品を評価する必要がある。そうした中でVeritasのSDSベンダー宣言は、ハイブリッドクラウドの時代にあって、バックアップを含めたデータの可用性/可搬性を考えるための1つの参考になるだろう。

関連キーワード

Veritas Technologies / SDS

関連記事

トピックス

[Sponsored]

バックアップは“保存”から“使う”へ、米VeritasがSDSで挑むデータマネジメント [ 5/5 ] データ分析で得られた洞察(インサイト)に基づく意思決定でビジネスを成長させようと、各種の取り組みを強化している企業は少なくない。ITベンダー各社も様々な領域からデータ活用に向けたメッセージを発信している。そうした中、バックアップツールベンダー大手の米Veritas Technologiesが「Information Management」を掲げ、SDS(Software Defined Storage)によるデータマネジメントの重要性を訴え始めた。バックアップ大手の同社がなぜ、データマネジメントなのか。2016年9月に開かれた「Veritas Vision 2016」での講演や幹部へのインタビューなどから、バックアップを含めたデータ管理のこれからを探ってみる。

PAGE TOP