データ分析で得られた洞察(インサイト)に基づく意思決定でビジネスを成長させようと、各種の取り組みを強化している企業は少なくない。ITベンダー各社も様々な領域からデータ活用に向けたメッセージを発信している。そうした中、バックアップツールベンダー大手の米Veritas Technologiesが「Information Management」を掲げ、SDS(Software Defined Storage)によるデータマネジメントの重要性を訴え始めた。バックアップ大手の同社がなぜ、データマネジメントなのか。2016年9月に開かれた「Veritas Vision 2016」での講演や幹部へのインタビューなどから、バックアップを含めたデータ管理のこれからを探ってみる。
その意味で、Veritasが目指すSDSは、「(データを実際に蓄積している)複数のSDSを全体として管理するための“広義”のSDS」(Pinczuk氏)であり、データの制御層(コントロールプレーン)を抑えたい考えだ(図2)。
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データの制御層を抑えるVeritasのSDSの画面例が図3である。アプリケーションとデータの配置場所、ストレージの利用量などが一覧できる。この画面上で、どのアプリケーションに対し、どれだけのプライマリーストレージ容量を用意するのか、バックアップはどこに取るのか、などを設定していくことで、そのアプリケーションに最適化したストレージ環境が確保できるという。
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ただSDS市場にはDell/EMCといった大手だけでなく、多数のベンチャー企業がひしめき合っている。この点についてColeman氏は、「ベンチャー企業は、資産として既にあるデータまでをサポートできないし、ストレージインフラを刷新しようとすればコスト負担が大きくなる。そしてVeritasは元々、ソフトウェアテクノロジーの会社である」と自信を隠さない。
OpenStack対応を強調、コンテナ技術にも対応
ではVeritasは、こうしたビジョンを実際には、どういった製品で実現しようというのだろうか。具体策としてVision 2016で発表された新製品や開発中の製品のいくつかを紹介しよう。コアの技術は現行のバックアップツールのNetBackupと、ストレージ/クラスター管理ツールの「Veritas InfoScale」、データリカバリーのオーケストレーション(自動化)ツールの「Veritas Resiliency Platform」などで培ってきたものだ。これらの技術を、データの保護、可用性、洞察の3つ分野に再整理しながら、新たな技術/機能を拡張していくことになる。
拡張の最優先事項は、クラウド環境への対応だ。例えばNetBackup自体、こまでAWSやGoogleなどのクラウドストレージへの接続にとどまっていたコネクターを、MicrosoftのAzureやOSS(Open Source Software)のクラウド構築用スタックである「OpenStack」のストレージへの接続を追加するほか、ライセンス形態にもクラウド型のサブスクリプション(購読型)モデルを用意する。
中でもOpenStack対応には力が入る。そのためにOSS専業ベンダーの米Red Hatと協業し、OpenStack上のアプリケーションに対するストレージサービスを構築していく。最初の製品となるのが「Veritas HyperScale for OpenStack」で、製品版投入に向けた事前検証プログラムを開始した。HyperScale for OpenStackは、OpenStack環境のためのSDSで、OLTP(On Line Transaction Processing:オンライントランザクション処理)を含むアプリケーションに対し、継続的なデータへのアクセス環境を用意する。
OpenStack重視の一環から、今後のアプリケーション開発の主流になると見られているコンテナ環境にも対応した。コンテナ環境を先導する「Docker」に対応するための「InfoScale Storage Plug-in for Docker」がそれだ。コンテナ環境では、アプリケーションは「マイクロサービス」と呼ばれる小さな単位に分割され、それぞれが連携しながら動作すると共に、その動作環境は従来以上にポータビリティが高まる。当然、データへのアクセス環境も、それに追従しなければならない。InfoScale Storage Plug-in for Dockerは、InfoScaleが持つクラスター管理技術を応用し、それを実現する。