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[市場動向]

デジタルビジネスの嵐の中で生き残れるか、CeFILの横塚氏が示した危機を示すデータ群

2016年10月12日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

CIO支援のための任意団体、CIO賢人倶楽部が2016年10月6日に開催したセミナー。その基調講演に立った人材育成支援団体CeFILの横塚裕志理事長は、様々なデータを駆使しながら、集まったCIOやITリーダーに向けてデジタルイノベーションへの取り組みを訴えた。デジタルビジネス、あるいはデジタル革命が進む中で、このままでは日本企業の多くは生き残れないという危機感からだ。その論拠は「経営者から一般社員、学生までを含めた勉強や学びの不足」。示唆に富むので、横塚氏の講演を再録する。

「ビジネス+IT=効率化」から「ビジネス×IT=価値創造」へ

 3Dプリンターなどにも言及した(図4)。「3Dプリンターは製造業だけでなく、建設業にもインパクトがある。FinTechも同じで、金融仲介という機能(Banking)は必要でも銀行(bank)はそうではない。米国の法律事務所では人工知能がワーカーの仕事を奪い始めている。こういった既存産業の破壊が複合的に進むのがデジタル革命であり、我々は否応なしに対応を迫られる」

図4:3D プリンターは巨大建築物を「印刷」できるようになる図4:3D プリンターは巨大建築物を「印刷」できるようになる
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 一体、どう対応するのか。答はシンプルで、「IT×ビジネスモデル=マーケット創造」をやっていくしかない。これまでの

ビジネス+IT=効率化

ビジネス×IT=価値創造

にするのだという。

 「問題は誰がそれを率いるのか、である。情報システム部門は既存システムの維持運用に手一杯。事業部門にはITの知見はないし不得手だ。そこで大手企業では“イノベーション推進部”といった新組織を作る動きが増えている。それで対応できるなら苦労はない。やはり経営トップ層がデジタルビジネスを理解し、リーダーシップをとる必要がある」

 そこでCeFILは「デジタルビジネスイノベーションセンター(DBIC)を設置した。エコシステム、オープンイノベーションといった考え方に基づいて、業種を超えた連携を促す。そのためのプラットフォームを作る」。DBICに関しては『経営層に“デジタルビジネス”の教育を!CeFILが専門機関設立へ、経産省などが支援』を参照して頂きたい。

 DBICは2016年5月に正式発足しており、現在、3つのプログラムを提供している(図5)。(1)企業の枠を超えたプロジェクトをサポートするイノベーションプロジェクト支援プログラム、(2)スイスのIMDと提携し、経営層にハイレベルの教育研修を行うトレーニングプログラム、(3)IMDやシンガポール経営大学、スタンフォードリサーチセンターと提携し、世界の最新情報を集めるなど調査研究を行うリサーチ&アドバイザリープログラム、である。

図5:DBICが用意する3つのプログラム図5:DBICが用意する3つのプログラム
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 横塚氏は、DIBCの活動を通じて日本に蔓延する悪しき慣習を変革したいと強調する。「3年後が見えないのに3年計画を作りたがることや、予算を決めたらそれ以外は出さないなど、枠にはまった思考、行動パターンのことだ」

 最後にイノベーションの起こし方にも言及した(図6)。「大義、正義に立ち返ることが重要だ。米Googleや米Tesla Motorsが進める自動運転技術の動機は交通事故をなくすことや地球環境を守ること。地球環境を守ることには、世界でおいしい水を飲めるようにすることもある。介護を楽に楽しくでもいい。自社や自分の都合を最優先しないことが重要である」

図6:CeFILの横塚理事長が提唱するイノベーションの要諦図6:CeFILの横塚理事長が提唱するイノベーションの要諦
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 さらにこう付け加えた。「余談だが、セキュリティの神話からは一刻も早く脱却するべきだ。一例が社内のデバイスから特定のWebサイトへのアクセスを禁止したり、ノートPCの持ち出しを禁止したりしていることである。Facebookへのアクセスを禁止するようなことをやっているのは、一部の日本企業だけだろう」。耳が痛い企業やCIO、ITリーダーは少なくないのではないか。

 なおセミナーを開催したCIO賢人倶楽部は、CIO支援に向けた中立的な活動を行うために2009年10月に発足した(事務局はKPMGコンサルティング)。様々な企業のCIOおよびITリーダー数十人で構成する。今回のセミナーの全体タイトルは「常に変化していくCIOの役割とは」だった。

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