[インタビュー]
コラボレーション中心の新しいワークスタイルで、生産性と社員満足度向上―ネットワン自身の事例
2017年1月26日(木)池辺 紗也子(IT Leaders編集部)
大手インテグレーターのネットワンシステムズは、「働き方改革」にいち早く取り組んだワークスタイル変革実現企業としても有名だ。全社員が利用可能なフレックス制度やコラボレーションツール、テレワーク環境といった施策によって、同社の業務環境、生産性そして社員満足度はどう変化したのだろうか。全社にワークスタイル変革が浸透した今、実際の効果(KPI)について、同社の経営企画本部 人事部 部長の下田英樹氏と、市場開発本部 ICT戦略支援部の手塚千佳氏に詳しく聞いてみた。
制度・施策は「だれもが対象」であることが重要――ストレスからの解放
――構想は2009年頃、実際に制度やツールを導入してから6~7年が経ちました。変革プロジェクト全体の成果はいかがでしょう。
手塚氏:私は育児をしながらこの会社で働いていますが、本当に働きやすくなったと実感しています。
子供が突発的に熱を出すなどで急遽休まなくてはならない時も、「午前中は病院に行くため半休し、午後からはテレワークでこの業務にあたる」といったように、当日の行動を明確にできます。以前だったら、申し訳ないと周りに謝り、引け目を感じながら休まざるをえなかった。そうしたことが精神的なストレスとなって積み重なっていたので、そこからの解放がすごく大きかったです。
また、「誰でも使える制度」ということが非常に重要だと考えています。いくら有用な制度でも、育児や介護にあたる一部の社員だけしか利用できないものだったら、結局は使いづらくなり、組織の働き方改革として意味をなしません。全員が平等に利用できるから浸透するのだと思います。
――なるほどです。実際に、育児や介護以外でも在宅勤務/テレワークを活用している社員はかなりいらっしゃるのですか?
下田氏:はい、普通に活用していますよ。「明日は荷物が届くのでテレワークで」といった感じで、さまざまなケースで使っているようです。マネジャーもいちいち理由を聞いたりすることなく。
手塚氏:私のチームでは、メーリングリストに「今日はテレワークです」と宣言することになっていますが、そこで理由を書くと、「理由はいらないから!」って言われますね(笑)。わりと頻繁に使っている場合は、「ご家族に何かあったのかな?」とか、本人へのケアのために聞いたりするケースはありますけどね。基本は一切聞かれないです。
下田氏:そう、基本、「やることだけを書いてください」と。約束したアウトプットを出すための制度なので、テレワークを使う理由は重要ではないわけです。
社員満足度と残業時間に顕著な改善、サービス品質も向上
――それでは、変革プロジェクトで得られた成果の詳細をうかがいます。生産性や残業時間、社員満足度などはどう変化したのでしょうか。
下田氏:まず、残業時間の短縮ですが、取り組みを始めてからただちに改善効果がありました(図1)。社員1人当たりの月平均残業時間も、過重労働者比率(残業時間が月40時間を超える社員の比率)も、2012年度から本社を移転した2013年にかけて大幅に改善されています。ただ、2014年にERPなどの業務システムをリプレースしたことも影響して残業時間などが少し増えました。そこから2016年にかけてまた改善に向かっていますが、年月が経ってやや踊り場にきているとは言えます。
――人事部から見て、満足できる成果は出ていますか。
下田氏:出ていますね。まず、新しいワークスタイルを取り入れた業務環境に対する社員の満足度は大きく向上しました。また、別の視点から、社員に「自分がお客様に提供しているサービスの品質についてどう思っているか」という意識調査を行っているのですが、取り組みを始めてから、こちらの質的な満足度も毎年上がり続けています。ただ、1人当たりの営業利益額といった経営的な数字で示せないのが残念ですが、生産性においては確かなプラス効果を感じています。
――コラボレーション中心のワークスタイル変革が、アウトプット重視のビジネスを実現し、顧客に届けるサービス品質も上がってきているということですね。
下田氏:はい。ただ、ここには若干のトレードオフもあります。サービスの質が上がるにつれて、お客様に対して付加価値の高いソリューションの提案を行うための準備時間や、社内でのコラボレーション時間が伸びてきてしまっているんですね。そのため、従来のようにお客様のところに足しげく通う回数や時間などは少し減ってきてしまっています。そこは課題です。