[インタビュー]
コラボレーション中心の新しいワークスタイルで、生産性と社員満足度向上―ネットワン自身の事例
2017年1月26日(木)池辺 紗也子(IT Leaders編集部)
大手インテグレーターのネットワンシステムズは、「働き方改革」にいち早く取り組んだワークスタイル変革実現企業としても有名だ。全社員が利用可能なフレックス制度やコラボレーションツール、テレワーク環境といった施策によって、同社の業務環境、生産性そして社員満足度はどう変化したのだろうか。全社にワークスタイル変革が浸透した今、実際の効果(KPI)について、同社の経営企画本部 人事部 部長の下田英樹氏と、市場開発本部 ICT戦略支援部の手塚千佳氏に詳しく聞いてみた。
ふるさとテレワークプロジェクトにも生かされた経験
――ネットワンは長野県塩尻市と共同で、総務省が推進する「ふるさとテレワーク」への取り組みも行っています。自社での取り組みや得られた経験が地方創生の支援活動にもつながっているのですね。
手塚氏:はい。総務省が全国で実証実験をやりますと言って申請を募った際、塩尻市の申請が採択され、当社に支援してほしいとお声がかかったのです。それで、2015年度に社員13人が塩尻市に出向き、サテライトオフィスでの業務をさせていただきました。
このときは活動報告書をまとめるところまで関わらせていただき、当社の役割はいったん終了しました。ところが、経理部長がこの支援業務を見て、「当社の業務のうち定型的な部分を切り出して、地方の優秀な人材にアウトソースするとよいのではないか」という発案をしたのです。当社にとっては働き方改革の推進、そして、塩尻市が進める同市での雇用創出に貢献もできると。そこで、同市で雇用創出や人材育成に携わる塩尻市振興公社とお話しをさせていただき、2016年9月から実際に、ふるさとテレワーク事業の一環として業務のアウトソースがスタートしました。
このふるさとテレワークではVDIを活用しています。従業員の方には、塩尻市内のサテライトオフィスに出勤していただき、当社のVDIシステムにログインして業務にあたっていただいています。
――双方にとってメリットの多いプロジェクトになっているのですね。東京と塩尻ではかなり距離もあるうえ、社外の人材とのコラボレーションになります。何か問題は生じていますか。
手塚氏:ビデオ会議システムを活用して距離の問題はクリアしていますが、やはり塩尻市の皆さんのアウトプットを間近で見ることができないという問題があります。業務の基本的な流れなどのレクチャーはできますが、何かイレギュラーやつまずきが生じたときに、「こんな解決策があります」といったタイムリーな回答が難しいんですね。また、当社のレクチャー役の社員に大きな負荷がかかることもあります。今後、そうした問題点を1個1個解決していきたいです。
――スタートで少し苦労があるものの、今後も広がっていきそうですね。
手塚氏:雇用創出の目的でご協力いただいている塩尻市側でもかなりの反響があるようで、このプロジェクトがモデルケースとなって横展開されていく期待もいただいています。まだまだ問題点はありますが、解決していきながら、このような動きが全国に広がっていけばいいなと思っています。
「性善説」でリスクを恐れずまずは着手
――ワークスタイル変革への取り組みは今後も続きますね。展望についてお聞かせください。
下田氏:先に申した生産性についてはもっと改善できると考えています。最初に成果の出た残業時間短縮などは、そろそろ頭打ち感もあるので、次のステップに取り組まなくてはならないでしょう。
あと、社内になおも残る古い文化への変革も今後のテーマです。当社で言うと、例えば、皆、会議好きなので延々と会議をやってしまうところがあります。まだまだ働き方の無駄はあるので、そういった時間を節約し、お客様のためにその時間を使っていきたいです。そのために、改めて、自分たちの働き方を見直すための次の仕掛けを考え始めているところです。
――最後に、ワークスタイル変革に取り組みたいが二の足を踏んでいる企業に、何かアドバイスをください。
下田氏:まずは「性善説」でやってみるというのがよいように思います。社員を信じて取り組んで、不具合があったらそこを後から改善していく。そのほうが旧来の体質や物事をドラスティックに変えていけるのではないでしょうか。
変革に二の足を踏んでいる会社はどこかで性悪説が入ってしまっている気がします。変革を悪用したがるような人は決して皆無にはなりませんが、多くてもせいぜい数%です。そこにとらわれてデメリットを過度に心配し、結局何のアクションも始まらないのは残念です。ですから、性善説に立ってまずは着手することが重要だと思います。
――まずは走り出すことが大事なのですね。今日はありがとうございました。