CDN(コンテンツデリバリネットワーク)で地歩を築いたアカマイ・テクノロジーズ。高速ネットワークで接続された膨大な数のサーバー群から成るクラウドプラットフォームを武器に同社は今、企業のデジタルトランスフォーメーション支援に軸足を移している。市場の動きをどう見ているか、独自のソリューションは、日本市場への期待は──。来日したアッシュ・クルカーニ(Ashutosh Kulkarni)氏<ウェブパフォーマンス&セキュリティ シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャー>に話を聞いた。
デジタルトランスフォーメーションはいよいよ本格期に
─企業が取り組むべきテーマとして「デジタルトランスフォーメーション」が声高に叫ばれている。技術の進歩やビジネス環境の変化に照らして、今の状況をどのようにとらえているか。
インターネットが地球規模で普及した今、人々の暮らしがある所には必ずといっていいほどネット環境がある。もはや我々のインフラであり、生活に関わることすべてをネットを使ってできるようにしようという動きが顕著であることは誰しも知っている。過去30年を見て、最も大きな変革期に差し掛かっていると言えるだろう。
当然のことながらビジネスも大きく変わる途上にある。メディア業界を例にとれば、従来型のテレビでブロードキャスト型の番組を視聴するスタイルは今もあるにせよ、特に若い世代では、好きなコンテンツを好きな時にWebで楽しむことが主流になりつつある。それに伴って収益構造、つまりは関係する企業のマネタイズの手法も様々な試行錯誤が続いている。
小売業界におけるネットシフトも顕著だ。私どもの顧客に話を聞くと、収益全体の半分をネットが稼ぎ出しているというケースは珍しくはない。中には80%以上という声もあり、主戦場は(物理的な)店舗ではなくネット上でのマーケティングやプロモーションだという意識が急速に高まっている。IoTやコネクテッドデバイスなどの技術進歩と相まって製造業では斬新なチャレンジが始まっているし、ブロックチェーンや分散レジャーをベースに金融業界もまた自らの存在価値を高めるための方向性を模索しているのはご存じの通りだ。
業種や業界によって多少の温度差はあるにせよ、今後の持続的成長のシナリオを考える上でデジタル技術の活用や、従来の延長線上というレベルを超えた“変革”が必須であることは全てのビジネスに共通する。つまり、デジタルトランスフォーメーションは黎明期を過ぎて、どの企業にとってもマストの“メインストリーム”になったということだ。
─大きな変化点に差し掛かる時、うまく波に乗る企業とそうではない企業があるのが世の常だ。デジタル時代への適用という観点で両者を分かつものは何だろうか。
月並みな言い方になってしまうが、従来からの事業モデルや成功体験に固執せず、自らを破壊することを厭わない会社でなければ競争優位を獲得することはできない。大変革期という“時代のコーナー”をチャンスと捉えて、巧みなアクセルワークとハンドルさばきで“攻める”企業が、その先のストレートをフルスロットルで駆け抜ける。無難にやりすごそうという姿勢では、トップ集団に取り残されるまでだ。
攻めるといっても、闇雲に突き進むという意味ではない。基本は、エンドユーザーやコンシューマがどんな期待値を持っているかをしっかり理解し、それに正対したサービス体験を創り上げていくこと。そこで、まだ他社がやっていないことに挑むのが攻めだ。潜在的な顧客はどのようにサービスにアクセスし、どのようなインタラクションを経て、どんな満足感を得たいのか。それを考え尽くして、万全の準備を整えることが欠かせない。
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