プロセスマイニング(Process Mining:プロセス採掘)という手法/ツールを聞いたことがあるだろうか。多様な業務システムからイベントログデータをかき集めて業務処理の流れ=ビジネスプロセスを再構成し、ビジュアルな形式で可視化する――だけにとどまらず、「ある業務プロセスを実行するパターンは何通りあるのか」「その中でコンプライアンス上問題があるプロセスはどれか」「特に時間がかかっているのはどの企業との取引か」など、任意の分析までも可能にするのがプロセスマイニングだ。これは、今流行のRPAを超えるインパクトを企業にもたらすかもしれない。
RPA(Robotic Process Automation:ソフトウェアロボットによるプロセス自動化)が大はやりだ。ガートナージャパンが2017年10月に公開した市場調査の結果によると、回答企業の約4割が導入済みか、導入を計画中という(図1)。調査時期が同年の5月であることを考えると、1年が経過した今では5割を超えているだろう。筆者の体感はそれ以上で、RPAを導入しない企業は少数派に思えるほどである。
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だが、ちょっと立ち止まって考えてほしい。RPAを導入する前に、対象とする業務プロセスが本当に必要不可欠なのかどうか、不可欠だとしてRPAで自動化するのが最善策かどうかはもっと検討したほうがよいのではないだろうか。大半の業務プロセスには例外処理が付きもの。例えばデータ入力作業の多くをRPAで自動化しても、少数の例外処理のために人を貼り付けておくようでは効果が限られてしまうのだ。
業務プロセスの可視化をどう行うか
では、何をすればよいか。答えは業務プロセスの可視化である。企業内にどんなプロセスがあって、どう分岐・連携しているのか。承認や決裁などの業務はどこに存在しているか。それぞれの例外処理は何かといった一切をすべて洗い出す。その上でRPAによって自動化するのか、何らかのシステムを構築するのか、あるいはアウトソースするのかを選択するわけである。
ただし、業務担当者にヒアリングするオーソドックスな方法でこれを実施しようとすると、頓挫する可能性が高い。どんな業務であれ、プロセス全体を把握している担当者はあまりいないのが通例だし、そもそも担当者によって業務のとらえ方が異なるのでヒアリングしたからといってプロセスを洗い出せるとはかぎらない。もう10年以上前になるが、内部統制とコンプライアンスのためのJ-SOX法対応の際に、多くの企業が苦労したのがこの点だ。
そこでぜひ知っておくべきなのが、この記事の本題である「プロセスマイニング(Process Mining)」である。企業内のさまざまな業務システムに蓄積されているイベントログデータから業務プロセスを再構成し、分析可能にする手法/ツールのことだ。膨大なイベントログデータをマイニング(採掘)して意味のあるプロセスを見出す――簡単に説明するとこうなるが、仕組みから「ABPD(Automated Business Process Discovery)」と呼ばれることもある。
プロセスマイニングにしろABPDにしろ、日本では認知されているとは言えないが、欧米ではそれなりに普及している。加えて、ドイツのセロニス(Celonis)という、このプロセスマイニング市場では最大手のベンダーが近く日本に進出する見通しであり、そうなれば、日本のユーザーにとってより使いやすくなることが期待できる。それでは以下、同社のCelonisソリューションを例にとって、プロセスマイニングの仕組みと活用のしかたについて解説しよう。
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