データセキュリティ専門ベンチャーであるZenmuTech(ゼンムテック)は2018年9月4日、Windows PCからの情報漏洩を防ぐソリューション「ZENMU for PC」の新バージョンを販売開始した。旧バージョンに比べてユーザーの操作負担を軽減したのが特徴。価格は1ライセンス2万7400円(税抜き)+年間15%の保守料(ボリュームディスカウントあり)で、社外でPCを使う機会の多い金融や交通・運輸、建設などの利用を見込む。すでに数社が採用したという。
ZenmuTechの「ZENMU for PC」は、データを意味のない形に変換して2つ以上に分割し、すべてが揃わないと元に戻せないようにする”秘密分散”技術をベースとする(図1)。例えばデータの大半をWindows PCに、残る少量のデータをスマートフォンに格納することで、両方が揃わないと元データを復元できなくなる。仮にディスク装置を解析するなど何らかの方法でPCのデータにアクセスできたとしても、無意味なデータしか得られない。
また秘密分散や復元処理はZENMU for PCが自動的に行うので、利用者には負担がかからない仕組みだ。スマホとリンクしていない場合に、PC側のドライブやフォルダが表示されないようにしたり、そもそもWindowsを起動できないように設定したりする機能もある。「外出先でPCの画面を見ながら商談している時、急な電話があって離席したとしても画面がロックされる」(ZenmuTech)。
加えて、万一、PCとスマホが同時に盗難に遭ったとしても、最近のスマホが持つ顔認証や指紋認証といった生体認証によって不正な利用をブロックできる。スマホがデータを閲覧・操作するための”鍵”になるわけだ。そもそも「スマホを身につけ、PCをバッグに入れるなど別々に管理するケースも多いので、同時に盗まれたり、置き忘れたりする可能性は低い」(同社)のも確かだろう。
ただし、ここまでは現行バージョンでも実現していた。違うのは操作性。現行バージョンではスマホとPCをUSBケーブルでリンクする必要があったが、新バージョンではBluetoothで接続できるようにした。ちょっとした違いに思えるが、ノートPCやタブレットPCを操作する場合にスマホを有線接続しないで済むのは使い勝手に影響するという。「例えば仕事や打ち合わせ中に電話などで離席したとき、Bluetoothの圏外になると画面がロックされる。不用意な閲覧を防止できる」(同社)。
ZenmuTechは、この製品を金融や交通・運輸、建設など社外でPCを使う機会の多い企業に販売する。なお上記の価格は永久ライセンスであり、年間ライセンスだと9600円(1~99ライセンスまで。ほかに保守料と利用料が必要)と下がるうえ、年間ライセンスの場合は常に最新バージョンを利用できる。
では、ほかのデータセキュリティ策と比べるとどうか。「Windows 10に標準搭載されているBitLockerや市販のファイルやフォルダを暗号化するソフトは、パスワードの管理がやっかい。結局、使われなかったり、単純なパスワードにするケースがあるし、時間をかければ解読される可能性もある。シンクライアントは導入費用やネットワーク環境の問題がある」(同社)という。図2は、ZenmuTechによる資料なので割り引いて考える必要があるが、使い勝手と費用のバランスは、いい線と言えそうだ。
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