[インタビュー]

「これまで届かなかった業界・顧客にSASアナリティクスを」─SAS Japan堀田徹哉社長

2019年3月12日(火)河原 潤(IT Leaders編集部)

10年、いや5年続けるだけでも難しいと言われるIT業界で、相次ぐM&Aや業界再編の波にも飲まれることなく独立系を貫いている貴重な1社が、1976年に創業し、統計解析/ビジネスインテリジェンス(BI)分野で台頭した後、現在はアナリティクスソフトウェアに注力する米SAS Instituteである。そんな同社が3年前、プロプライエタリからオープンに舵を切った新世代製品「SAS Viya」を発表し、みずからの変革と共に、顧客のアナリティクスの変革を推し進めている。日本法人SAS Institute Japanの代表取締役社長である堀田徹哉氏に、Viyaをコアとする同社の戦略やアナリティクスの方向性などを聞いた。

業界別ソリューションの強化で新規ユーザーが増える

──SAS Institute Japanは3年連続の増収増益と好調です。どんな業界あるいは企業の課題で導入が進んだのでしょう。

 業種・業態を問わず、幅広い業種に広がっています。SASはもともと金融やライフサイエンス分野に強みを持っていましたが、2016年以降、特に製造業においてアナリティクスの活用が急速に進み、多数採用いただいています。

 製造の場合、QCサークルなどの品質管理の取り組みでもデータを活用しますが、それがさらに高度化している流れがあります。加えて、製造工程自体の自動制御やアナリティクスモデルを用いて製品品質のさらなる向上を図るといった、スマートファクトリーの潮流も後押ししています。

写真1:SAS Institute Japan代表取締役社長 兼 米SAS Institute 日本・韓国 地域統括バイスプレジデントの堀田徹哉氏

──SASの典型的な対象ユーザーというより、新規の顧客が増えているのですね。

 そうです。製造の品質管理の高度化やスマートファクトリーといった領域は当社にとってホワイトスペースで、新規のお客様にSASの特徴やサービスを評価いただいています。一方、金融やライフサイエンスでは古典的なSASのイメージが強く、SASを一種のプログラミング環境ととらえているお客様が多い。統計分析のコーディング環境として「Base SAS」を導入し、そのうえでアナリティクスモデルを構築するというのが、SASを熟知したユーザーのコアな使い方でした。

 SASをもっと広範な層・用途で使っていただこうと、当社がインダストリーソリューションとして業界ごとに最適な製品を提供する体制を強化したことも大きいです。SAS自体が変化しているわけです。

 ソリューションには、金融向けの「アンチマネーロンダリング対策」「ストレステスト」や、ライフサイエンス向けの「臨床試験」といったものがあります。臨床試験を例にとると、データ解析のプランニング、解析、当局への申請といった一連のプロセスに対して、アナリティクスを中心とした一連の業務をサポートするソリューションを提供しています。また、既存のお客様においても、Base SASをソリューションに置き換えるような動きも進んでいます。

──製品を選ぶというより、目的指向のソリューションで提案し、それが顧客に響いたと。

 2015年10月、私が社長に就任して最初に取り組んだのがSAS製品のソリューション化でした。ソリューションと呼べる状態にはある程度なっていたところに、明確にインダストリー別に提案・販売できるチーム編成や目標設定を行ったのです。ただし、全業界を網羅しているわけではありません。強みの金融、ライフサイエンス、それからニーズが急速に増している製造業の品質管理やアセットマネジメントなどから投入しています。

 こうして、ソリューションが選ばれるパターンのほかにもう1つ。データ活用の取り組みの過程で、もう少し高度なアナリティクスをやってみたいが、どういう環境やソフトウェアが適しているかと検討した結果、SASの持つ機能とサービス品質を評価していただくというパターンが増えています。

──この数年来、データ活用に対するユーザー企業の意識が相当に高まったという実感がありますか。

 実感します。デジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流の中で、データ経営やデータからインサイトを知るということを今、戦略に掲げておられない企業はいないでしょう。データを分析して何か知見を得られないかと取り組みを始められますが、たいてい最初に見つかるのはデータが整備されていないという現状です。

 アナリティクスを始めよう、分析を基にデータ経営に移行しようというとき、最初に直面するこの課題に対してもSASの製品が役立ちます。アナリティクスの技術自体に加えて、データ整備のための「SAS Data Management」の組み合わせを特にご評価いただいています。

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