AI開発のエイシングは2019年5月31日、工場などに設置したエッジコンピューターを使ってリアルタイムにIoTデータを機械学習できるようにするソフトウェアツールキット「ディープ・バイナリー・ツリー」(DBT)のラインアップを強化した。高速処理を得意とする従来の「DBT-HS(High Speed)」のほかに、生成した予測モデルの予測精度を最大約50%高めた「DBT-HQ(High Qualty)」を用意した。
エイシングのディープ・バイナリー・ツリー(DBT)は、工場などのエッジコンピュータ上でIoTデータを学習できるようにした、軽量の機械学習ツールキットである。予測モデルを用いた予測処理だけでなく、予測モデルを生成するためのデータの学習工程もエッジ側で行える。クラウドと通信することなく、エッジ側だけで自律的にデータを学習して予測などに活用できる。リアルタイムな逐次学習によって、環境や個体の変化に追従できる。
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これまでは、高速処理を得意とする「DBT-HS(High Speed)」を提供してきた。軽量であり、エッジ側で自律的に学習できるメリットがあるが、学習によって生成した予測モデルの予測精度は、クラウドで学習して生成した予測モデルに劣っていた。今回新たに、予測精度をクラウドで学習した場合と同様に高めることを狙った「DBT-HQ(High Qualty)」を追加した(図1)。
エイシングは、DBT-HSとDBT-HQを比較した検証を実施した。手書き英字の特徴量からアルファベットを特定する検証では、DBT-HSが63.0%の正解率だったのに対して、DBT-HQでは90.6%という高い正解率となった。DBT-HQはDBT-HSに対しておよそ10~50%程度予測の精度が向上している結果となった。自律学習型でありながら、よりクラウド型に近い予測精度を実現したとしている。
DBT-HQの適用領域としてエイシングは、モビリティ業界や製造業界への実装化を中心に進める、としている。自動運転車や産業機械は、導入機器側でのリアルタイム予測とより精度の高い予測を必要とするため、DBT-HQが適しているとしている。