[技術解説]
"現場での推論"に特化した「NVIDIA Jetson Xavier NX」─新製品に見るAIエッジコンピューティングの可能性
2019年11月11日(月)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
米エヌビディア(NVIDIA)は2019年11月6日(米国時間)、GPU搭載コンピュータボード「Jetson」ファミリーの新製品「Jetson Xavier NXモジュール」を発表した。ユーザーの間で近年ニーズの高いエッジコンピューティングでのAIワークロードに特化したモデルとなる。本稿では、APAC向けのプレスブリーフィングで同社が明らかにした特徴をお伝えする。
GPU分野のマーケットリーダーのエヌビディアが戦略的な製品を投入する。「Jetson Xavier NX」(写真1・2)は、Jetsonファミリーで最小の「Jetson Nano」と同じサイズ(45mm×70mm)で完全ピン互換を実現しつつ、GPUには最上位シリーズ「Jetson AGX Xavier」と同じVotlta Tensorコア(384コア)を搭載。にもかからわず、価格は399ドルとAGXよりも大幅に抑えられている。
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米エヌビディア(NVIDIA)アクセラレーティッドコンピューティング製品マネジメント担当ディレクターのパレシュ・カーリャ(Paresh Kharya)氏は、「新製品は既存のNanoとAGXのそれぞれの長所、つまりNanoの小ささとAGXのパワーを同時に実現したシングルユニファイドアーキテクチャ。これでエッジコンピューティングにおける当社の優位性がより高まった」とアピールする。
Jetson Xavier NXが加わったことにより、Jetsonファミリーのラインアップは全部で4シリーズとなった(写真3)。
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AIエッジコンピューティングの台頭と汎用CPU/GPUの課題
米エヌビディア オートモーティブ事業担当バイスプレジデントのロブ・チョンガー(Rob Csongor)氏はNXが適している分野として、「ドローンなど自律動作型マシン」「高解像度センサー」「ビデオアナリティクス」「組み込みデバイス」の4つを挙げる。これらのマシンが多く使われている医療や製造業の現場では、AIワークロードの一部をエッジデバイスで実行するエッジコンピューティングへの期待が強い。
これまでの一般的なAIワークロードは、データ収集、学習、モデル作成、推論といった一連のサイクルをクラウド上で完結させていたケースが多かったが、よりスピーディな処理と生産性の向上を求めるユーザーのニーズにより、クラウド上で学習・作成したモデルをデバイスにデプロイし、推論をデバイス上で行う「AIエッジコンピューティング」を導入する動きが活発化している。
しかし、AIエッジコンピューティングに限らず、いまやモダンなAIワークロードにおいては「汎用的なCPU/GPUでは十分なパフォーマンスを上げることが難しくなってきている」(チョンガー氏)と言われている。
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