[技術解説]
Dell EMCが目指す次世代ITインフラはユーザーに何をもたらすのか
2019年12月3日(火)渡邉 利和
米Dell Technologies(Dell EMC)が、クラウドやコンバージドインフラなどの「その先のコンピューティング」の提供に向けて研究開発を進めている。本稿では、2019年11月12日に米テキサス州オースティンで開催されたDell Technologies Summit、翌13日にプレスに公開した同社ラボで語られた同社の動きや戦略をお伝えする。
Dell Technologies(Dell EMC)は従来、年次イベントとして「Dell Technologies World」を5月に開催してきたが、同社としては大規模な情報発信の機会を年1回から半年に1回にサイクルを短縮する意図があるようで、今回を初回として「Dell Technologies Summit」を以後も毎年開催していく意向だという(写真1)。
もっとも、“World”がユーザーも含めた大規模イベントなのに対し、今回の“Summit”はプレス/アナリストを対象としたイベントで、規模の差は歴然としていた。このところ、米国の主なIT企業では大規模なユーザーコンファレンスを年1回のサイクルで開催するペースが一般的だが、今後他社でも同様に年2回のサイクルに移行するところが出てくるのかどうか、興味深い。情報発信のサイクルが短縮化するとしたら、それは業界の変化のペースが再び加速することの反映であろうと思われるためだ。
Dell Technologies on Demandが提供する新たな消費モデル
Dell Technologies Summitで最も注目を集めた発表と言えるのが、「Dell Technologies on Demand」の発表だ。Dell EMCは「業界で最も幅広いインフラポートフォリオを、従量課金制のas-a-serviceモデルで提供」と謳う(図1)。
拡大画像表示
ハードウェアベンダーによる同様の取り組みはすでに各社から提供されており、その意味での目新しさはないが、一方でこの種の取り組みがストレージベンダーから始まっていることは留意しておいたほうがよいだろう。
ストレージはそもそもデータ量に応じて“量”でリソースを確保することに違和感がないし、PCやサーバーに内蔵されたハードディスクドライブ(HDD)とは異なり、ネットワーク接続型のストレージを導入するユーザーはある程度以上の規模の企業が大半で、さらにネットワーク経由で提供される共用リソースという位置づけから、個々の単価は高い一方通常は数的にはそうそう膨大な数が導入されるわけではない。ドライブ数はともかく、ユニット数なら一般的なユーザーの場合せいぜい数台、多くても10数台程度だろう。この点、重量課金モデルで提供する際に必然的に発生する「ユーザーごと/ユニットごとの個別管理」の負担がさほど大きくならないことが期待できる。
一方で、サーバーの場合はかなり事情が違ってくる。伝統的にはプロセッササイクルを基準に従量課金を行う方法が定着しているが、プロセッシングリソースという観点からはメモリ量も重要な指標となりうるし、昨今急速に普及しつつあるGPUやFPGAといったCPU以外のアクセラレータ/プロセッサをどう考えるか、という問題もある。
また、導入される台数も多いし、ユーザーの裾野も大幅に拡大することになる。さらにDell EMCの場合、クライアントPCも既存の重要なビジネスとなっているため、これも大きなインパクトを与えることになる可能性がある。もっとも、クライアントPCまで行くと、これはもう従来型のリースと同様に「使用期間」をベースに料金を決定する形でユーザー側も納得するような気もする。
●Next:Pay As You Grow(成長に応じて)支払いが決まる消費モデル
会員登録(無料)が必要です
- 1
- 2
- 3
- 次へ >