業務プロセスの全社最適化アプローチとして欧米企業の間で採用が進み、国内でも導入事例が現れ始めた「プロセスマイニング」。現在、欧米企業の間で、やはりマイニング技術を用いる「タスクマイニング」なるものが注目を集めている。何のための、何をする手法なのか。プロセスマイニングとどう関わり、業務の何を変えるのか。プロセスマイニング最大手の独Celonisがタスクマイニングツールを投入したときの発表内容をベースにポイントを紹介する。
プロセスマイニングとタスクマイニングの違い
プロセスマイニング(Process Mining)は、基幹システムなどのログデータを基に、業務プロセスを自動的に分析・可視化し、最適化のための洞察を得る手法。業務システムのログデータから対象ID、アクティビティ、タイムスタンプを収集、この3つを軸に、実際に実行されたプロセスを再現する(関連記事:[特集] プロセスマイニングの衝撃)。
一方、タスクマイニング(Task Mining)は、オフィスソフトへの入力、メールの送信などPCの操作ログデータを、タスク単位で可視化・分析して業務の最適化につなげる手法。つまり、プロセスマイニングの改善対象がプロセス単位なら、タスクマイニングの改善対象はタスク単位ということになる。
タスクマイニングツールはすでに、米Pegasystemsの「Pega Workforce Intelligence」や、米Ciceroの「CICERO」(日本国内ではハートコアが販売)、プロセスマイニングツール「myInvenio」開発元の伊Cognitive Technologyの「myInvenio Task Mining」などが提供されている。そして、プロセスマイニングツールの最大手である独Celonisも、2019年10月に、自社のプロセスマイニングツールの拡張としてタスクマイニングの提供を発表している。
これらのベンダーの動きを見てわかるように、プロセスマイニングとタスクマイニングは、ある種の補完関係にある。その関係性を示す例として、「受注を入力すればすぐに請求書を発行できる」プロセスを考えてみる。
このプロセスをプロセスマイニングで分析すると、請求書の発行までに30分かかったことがわかる。プロセスマイニングでわかるのは、30分かかったという事実まで。なぜ30分もかかったのか、その原因まではわからない。
タスクマイニングは、そのプロセスをブレイクダウンしてタスクの分析を可能にする。基にするのは担当者が使うPCの操作ログである。担当者が別の業務をしていたのか、PCを操作していなかったのかなど、30分もかかった原因を知ることができる。プロセスマイニングではできない、担当者たちのタスクの可視化・分析を担うわけだ。
PCの操作ログからタスクを浮き彫りにする
タスクマイニングツールは実際どのような動作を行うのか。Celonisのタスクマイニングを取り上げてその流れを見てみる(図1)。
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図にあるように、タスクマイニングが行うのは、PCの操作ログを収集し、エンドユーザーがシステムやソフトウェアを、どのように使用しているかを自動検出すること。具体的にはオフィスアプリケーションへの入力、メールの送信といった個々のアクションやタイムスタンプを収集するほか、OCR技術などを用いてPC画面上の単語、数字、テキストを認識・抽出し記録する。
データの収集が済めば、可視化・分析だ。自然言語処理技術によりトピックとなるキーワードをモデル化したり、どのキーワードがユーザー名、ラベル、顧客名、注文書などにあたるかを識別したりする。業務の流れをコンテキスト情報として識別する。そうして可視化されたタスクを構成する情報を、ユーザーのアクションと関連付けて分析し、タスクの中身が浮き彫りになるわけだ。
これにより、「担当者がこの期間不在だったため、この仕事が行き詰まってしまった」といったボトルネックと原因の発見が可能になり、状況改善のために必要なタスクの最適な組み合わせを検証することができる。あとは、問題のタスクをスパッと削除したり、あるいはRPAなどにより自動化したりといった判断を行うことになる。
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