富士通研究所は2020年3月3日、テープストレージメディアの磁気テープにおけるランダム読み出し性能を高める新技術を開発したと発表した。既存のファイルシステム「LTFS」を拡張し、LTFSの上位に、複数のテープカートリッジを仮想統合するファイルシステムを新たに開発した。アクセス性能の評価では、従来方式と比べて4.1倍高速にできた。2022年度中に富士通での製品化を予定している。
富士通研究所は、テープストレージメディアの磁気テープにおけるランダム読み出し性能を高める、新たな仮想ファイルシステムを開発した。
「一般的に、磁気テープはシーケンシャル(連続的な)アクセスで済むデータバックアップ用途で使われている。これに対して、新技術を適用すると、ランダムアクセス性能が向上する。保存データから所望のファイルを取り出すアーカイブ用途での使い勝手が向上する」(同社)。
現在でも、ランダムアクセスができる磁気テープ向けファイルシステム「LTFS」がある。これを使うと、ハードディスクなどと同様に、テープストレージをファイルシステムとしてマウントし、ファイル単位で読み書きできる。ディレクトリごとに別々のテープカートリッジを使うといった分散アクセスでアクセス性能も高められる。しかし、テープである以上、ランダムアクセス性能が低かった。
富士通研究所は今回、既存のファイルシステムであるLTFSの上位に、複数のテープカートリッジを集約する仮想的なファイルシステムを開発した(図1)。これにより、個々のテープカートリッジを意識することなく、所望のファイルにアクセスできるようにした。この上でさらに、ランダム読み出し性能を高める2つの機能を実装した。テープ上の物理位置を考慮してアクセス順序を制御する機能と、複数のファイルを1つに集約する機能である。
ランダム読み出しを高速化する技術の効果を紹介している。分散ストレージソフトウェア「Ceph(セフ)」を利用してハードディスクと磁気テープの階層ストレージを構築し、アクセス性能を評価した。磁気テープ上に蓄積した5万個の100MBのファイルからランダムに100ファイルを読み出す時間は、従来方式の5400秒に対して、新技術では従来比4.1倍となる1300秒となった。
また、ハードディスク上にある256個の1MBのファイルを磁気テープ上に移動させる時間は、従来方式の2.5秒に対して、新技術は従来比1.9倍となる1.3秒となった。
●Next:ランダム読み出しが速くなる仕組み
会員登録(無料)が必要です