[技術解説]
システム運用担当チームの在宅勤務化はこう進める!「出社前提の聖域なき取り組みを」
2020年4月10日(金)磯谷 元伸(NTTデータ グローバルソリューションズ 代表取締役社長) 古谷 一洋
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中を襲う中、日本政府は2020年4月7日に7都道府県で緊急事態宣言を発令した。そこでは社員の在宅勤務を推奨し、企業の積極的なテレワーク導入を呼び掛けているが、すべての業務担当者がテレワークを導入できるわけではない。IT部門にとっての重要課題の1つがシステムの運用保守業務だ。NTTデータ グローバルソリューションズは、同社システム運用センターの在宅勤務化をどのように進めたのか。緊急寄稿のかたちで同社での実践を紹介する。
本誌連載記事、「2025年の崖」に立ち向かうERP刷新プロジェクトの勘どころおよび「2025年の崖」の先にある基幹系システムの未来の筆者であるNTTデータ グローバルソリューションズ(NTTデータGSL)社長の磯谷元伸氏とアウトソーシング事業部 AMS統括部 シェアードサービスセンター長の古谷一洋氏。両氏から、「新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中で重要な任務を担うシステム運用担当者の皆さんに、自分たちのノウハウを役立ててもらいたい」とのことで緊急寄稿を得た。以下の内容をぜひ参考にしていただきたい。
約200名が一斉に完全在宅勤務へ移行
日に日に切迫度が高まる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大。その中でIT部門は、自社のビジネスを止めないためのITインフラ・システムの運用保守で大きな役割を担っている。そのポイント・留意点について、当社のシステム運用センターにおける緊急対策事例を交えて紹介していきたい。
現在、各社とも本社や各拠点のオフィスワークの在宅勤務化を急ピッチで進められているかと思う。だが意外にも、IT部門自身、特に日中時間帯、場合によっては24時間×7日の問い合わせ・監視対応を行っているシステム運用センター業務については、さまざまな制約からテレワーク対応が進んでいないところが多いのではないだろうか。
当社でも、SAPシステムの導入・コンサルティングを行うチームと共に、100社近いユーザー企業のシステム運用、維持管理、エンハンスメントを行うAMO(アプリケーションマネジメントアウトソーシング)を行うチームを擁している。
2020年2月中旬に、都内でも新型コロナウイルスの2次感染者が発生した時点で、単に海外帰国者や自覚症状のある社員・パートナー企業の出社を制限しただけでは感染リスクを完全になくすことは難しくなった。
万が一、オフィスの勤務者、もしくは来訪者に1人でも感染者が出た場合は濃厚接触者の特定、さらに消毒作業のために終日センターを閉鎖しなければならなくなるだろう。
さらに今後、感染がさらに広がっていけば、社会的な要請に基づく出社制限やフロア閉鎖もありうる。その場合、100社近い大切なユーザーの日々のシステム運用に支障が出てしまう。特に年度末・年度始の時期と重なると、年度決算や期末の実地棚卸、組織変更処理など重要な業務が控えているため、絶対に運用業務を止められない。
このような背景の下、当社ではセンター業務を在宅でも行えるように緊急対策チームを立ち上げ、完全在宅勤務を目標とした検討を開始した。
2020年3月27日夜、東京都の小池都知事から新型コロナウイルス感染症に関する緊急メッセージが発表された。これを受けて、当社では週明け3月30日から若干名の緊急対応当番を除いて、社員・パートナー企業を含めた約200名が一斉に完全在宅勤務に移行し、年度末・年度始のシステム運用に対応することにした。
今回はここに至るまでの検討課題や留意すべきポイントについてまとめてみたので、ぜひ皆さんの参考にしていただければと思う。
従業員の安全確保とサービスレベル維持を目指す
はじめに、今回在宅勤務化を進めたAMOサービスの概略について説明したい。当社は100社近いユーザーの運用を領域・業種ごとにチームに分けて、複数社をチームでシェアしながら実施し、専門的なサービスを提供している。
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東京と大阪にセンターを構え、社員・パートナー企業を含めた約200名でSAPシステムの業務運用、問い合わせ、障害対応、仕様変更、各種エンハンスメントの対応をしている。加えてRPA、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)、ユーザートレーニングなどのユーザーニーズに応じたオプションサービスも提供している。
インシデント管理ツールを活用し、定常業務以外に月に1000件超のチケットを処理し、海外拠点からの問い合わせにも対応している。主に中国、インド、東南アジア、米国、欧州等を海外グループ会社と連携して幅広い地域をカバーしている。
政府から各種イベントの自粛要請が出された直後、2月27日にAMO統括部内にも、緊急対策チームの設置をし、完全在宅勤務を実現するための検討を開始した。チーム構成は運用判断の出来るリーダー、ネットワーク担当者に加えて、全体の調整取りまとめを行うPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)メンバーで構成し、各課題にタイムリーに対応できる体制とした。
従業員の安全確保が最大の目的であるが、準備にあたって最も重視したことはユーザーに対して大きなサービス影響がでないように進めることである。また、ユーザーに対しても、セキュリティを確保すること、サービスレベルを担保することを前提として在宅勤務を実施することに対する理解を順次、得ていった。
実施に際しては、はじめから一斉に在宅勤務を行うと、想定外の影響・課題が発生するため、試行実施/完全実施の二段階に分けて対応を行うこととした。
●Next:IT部門は在宅勤務をどう支えるか、その具体的ポイント
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