ガートナー ジャパンは2020年5月14日、日本におけるクラウドコンピューティングに関する最新の調査結果を発表した。2020年1月に実施した調査の結果、日本におけるクラウドコンピューティングの導入率は、IaaSやPaaSなど各種サービスの平均で18%だった。また、74%がクラウドに関するスキルの獲得を重要と認識している一方、そのうち49%は実際のスキル獲得を現場任せにしていることが分かった。
ガートナー ジャパンは、日本におけるクラウドコンピューティングに関する調査結果を発表した。調査によると、日本におけるクラウドコンピューティングの導入率は、IaaSやPaaSなど各種サービスの平均で18%と低かった(図1)。この結果について同社は、「日本企業は、クラウドへのシフトを当たり前のものと思い始めている一方で、実際の導入には引き続き慎重な姿勢を示す企業が多い」と分析する。
図1:クラウドコンピューティングの導入率。図1の「平均」は、SaaS、PaaS、IaaSなどのそれぞれの導入率を合計して項目数で割った値であり、実数ベースではない(出典:ガートナー ジャパン)拡大画像表示
クラウドのスキル獲得に関しても聞いた(図2)。結果、74%が、クラウドに関するスキルの獲得を重要と認識していた。しかし、そのうち49%は、実際のスキルの獲得を、現場任せにしていた。この結果についてガートナー ジャパンは、「人ない、金ない、時間ないを、クラウドを自分で運転できない理由として挙げる企業が多い。こうした姿勢やカルチャーが、クラウドのスキル獲得を現場任せにする要因になっている」と分析する。
図2:クラウドのスキル獲得に対する投資の状況(出典:ガートナー ジャパン)拡大画像表示
さらにガートナーでは、「政府や自治体などと同様のカルチャーを持つ企業では、2~3年で人材をローテーションすることから、クラウドやAIといったテクノロジに関して、素人のままとなる」と指摘する。仮にクラウドやAIを導入することになっても、自分で運転するよりも誰かに頼むことが優先されてしまうため、いつまでたっても満足のいかない結果を生む。「まずは、ユーザー自らが有益な書籍を読むなどして、知見を高めておくことが重要」とした。
また、クラウド化のような議論では、業務要件の継続を前提にした、いわゆる「業務要件ファースト」になりがちだとガートナーは指摘する。こうした、昔と同じことを継続するだけのアプローチでは、クラウドの真価を発揮できず、新たなビジネス成果も出せない。クラウド化に際してベンダーやインテグレータを選ぶ際は、企業名よりも、しっかりとしたスキルを持つエンジニアを選ぶことが重要だとした。
ガートナーでは、「クラウドコンピューティングは、SIを置き換えるものであっても、SIの商材の1つのように矮小化されるべきものではない」と指摘する。クラウドコンピューティングは新しいパラダイムであり、従来のシステムインテグレーション的なシステム構築の反省に基づくものだとした。
クラウドの議論は、クラウドによってスタイルチェンジができるかできないかに移りつつある、とガートナーは指摘する。ITの作り方やサービスの調達の仕方、エンジニアの在り方の転換を意味する。これができなければ、クラウドであろうがオンプレミスであろうが、物事は特段変わらないとした。
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