[ユーザー事例]

保有する顧客関連情報を法人顧客に提供―邦銀初の統計データ提供に乗り出したみずほ銀行の取り組み

2021年3月12日(金)杉田 悟(IT Leaders編集部)

2020年5月、改正銀行法が施行され、銀行が保有する顧客に関する情報を第三者に提供できるようになった。まだ目立った動きはほとんどないが、2021年2月に開かれたクリックテック・ジャパンの説明会にみずほ銀行のフロンティアビジネス推進部アナリティクスソリューションチーム次長の塚本好宏氏が登壇。2020年11月に顧客データを統計処理して企業向けに提供する「Mizuho Insight Portal(Mi-Pot)」を開始したことや、経緯を説明した。はたしてどんなサービスであり、仕組みなのか?

銀行法の改正で加工済み顧客データの第三者への提供が可能に

 みずほ銀行が提供するのは、町丁目などエリアごとに、個人の入出金情報を集計した統計データ。具体的には①口座の給与振込情報をもとに国勢調査の人口比でエリアごとの年収を統計化した年収(手取)統計、②口座振替や振込のデータを1カ月単位で集計した口座出金データ統計、③みずほ銀行のクレジットカードの決済情報を利用先の業種別に集計した統計、④顧客のATM利用金額をエリアで集計したATM利用統計、という4種類のデータである。

写真1:みずほ銀行のフロンティアビジネス推進部アナリティクスソリューションチーム次長の塚本好宏氏

 現在は、関東1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の統計データを提供しており、今後は「関西や九州などのデータも提供する予定」(塚本氏:写真1)だ。エリア区分は標準では「町」までだが、カスタムメニュー(オプション)では「丁目」まで細分化している。主に小売業や飲食、サービス業などにおける商圏分析や出店計画への利用を想定している。利用企業にとってはこうした統計データではなく、個別の顧客データを期待する面もあるはずだが、匿名化したとしても個人が特定される可能性があるため困難なようだ。

 みずほ銀行が、統計値とはいえデータ提供を開始したのは、2020年5月に改正銀行法が施行されたため。個人情報保護法令を遵守する前提の下で、顧客データを企業など第三者に提供する業務が同法に追加された。具体的には下記の条文である。

銀行法第十条の二項
顧客から取得した当該顧客に関する情報を当該顧客の同意を得て第三者に提供する業務その他当該銀行の保有する情報を第三者に提供する業務であって、当該銀行の営む銀行業の高度化又は当該銀行の利用者の利便の向上に資するもの

 これに反応したのがみずほ銀行だった。「Mizuho Insight Portal(Mi-Pot:ミーポット)」と呼ぶサービスを2020年11月に開始した。

 ただし、単純に統計データを提供するわけではない。クリックテック・ジャパンの説明会に登壇したことから明らかだが、同社のBIツール「Qlik Sense」を利用する想定で、分析テンプレートや国勢調査データをセットにして提供する。分析テンプレートにより、例えば700万円未満、700万円~999万円、1000万円~1499万円、1500万円以上など、年収別の人口ボリュームをヒートマップで表示できる。加えて人数の構成比を円グラフ、年代別・町名別の年収割合を棒グラフで表示したり、画面上で分析軸の変更を変更できる(画面1)。

画面1:年収統計の分析テンプレート画面。①分析軸の選択項目、②人口ボリュームのヒートマップ、③年収階層別の人数の構成比、④年代別・町名別の年収割合、⑤選択された分析軸の条件(出典:みずほ銀行)
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●Next:Mi-Potのセキュアな利用を担保

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