[市場動向]
日立が1兆円で買収する米グローバルロジックはどんな会社なのか?
2021年4月1日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)
日立製作所は2021年3月31日、米グローバルロジック(GlobalLogic)を約85億米ドル(約9180億円)で買収すると発表した(関連記事)。総計1兆円近い巨費を投じるグローバルロジックは一体どんな会社なのか? 日立は同社を「デジタルエンジニアリングサービスのリーディングカンパニー」と説明するが、それだけではピンとこない。6つのサービスを軸にしているが、それぞれの内容から全体の業容を確認してみる。
米グローバルロジックのWebサイト(図1)を眺めてみても、社名や提供サービスにあまり馴染みがないのは当然だ。日本にはまだ存在しないタイプの企業だからである。とはいっても別段、ユニークでも特殊でもない。同社のサービスは次の6つから成る(図2)。
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①デジタルアドバイザリー
DXに向けて、何を目標とするべきなのか、何が足りないのか、ロードマップをどう描けばよいのかなどの定義や策定を支援する。
②エクスペリエンスデザイン
デザイン思考に基づき、ベストなユーザーエクスペリエンスの構築を支援する。その際、テクノロジー(の進化)からバックワード(逆算)しての構築をサポートする。
③ソフトウェアエンジニアリングサービス
世界中に約1万2000人のデザイナー、アーキテクト、ソフトウェアエンジニアを擁し、最短時間で最高のデジタルプロダクトを生み出すのをサポートする。開発だけでなく、ライフサイクル全体を支援する。
④ラボ(R&D)
企業に時間と才能が不足している場合、必要なことを提供する。つまりターンキー方式でR&Dを請け負う。
⑤コンテンツエンジニアリング
今日のプロダクトは、カスタマイズされたコンテンツとデータが前提である。そこでコンテンツの強化、データ分析、機械学習によるモデル構築を行う。
⑥アトラシアンサービス
豪アトラシアン(Atlassian)が提供するJira(プロジェクト作業の計画や追跡)、Confluence(チームのための作業の作成、コラボレーション)、Bamboo(継続的インテグレーションとデプロイメント=CI/CDツール)といった、ITプロジェクト運営のためのソフトウェアの選択・導入・活用を支援する。
以上である。デジタル化の波が急速に広がり、業種や業態、企業規模を問わずソフトウェアやデザイン力が生き残りや成長に欠かせなくなる中、既存の多くの企業は自前でそれらを揃えるのは難しい。これを提供するのがグローバルロジックであり、すべてのサービスを包含するのがデジタルエンジニアリングサービスである。
「それに近いことは日本のSI企業もやっている。少し言葉で飾っているけど、大きな違いはないのでは?」。こう思われるかもしれないが、デジタルトランスフォーメーション(DX)のロードマップ策定からソフトウェア開発、コンテンツ強化も含めたユーザー体験のデザインまで多くをワンストップで提供できるSI企業は、国内にはまずないだろう。
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