デル・テクノロジーズは2021年8月19日、中堅企業のデジタル変革を推進する支援プログラム「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」の第3回中間報告会を開催した。2020年10月に同社が奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)と共同で開催した「DXアクセラレーションプログラム本選」の上位入賞9社が登壇し、各社の取り組みを説明した。本選から10カ月が経過(2021年2月3日の第1回中間報告から6カ月、2021年5月13日の第2回中間報告から3カ月が経過)した時点での、各社の最新状況を報告した。
「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」は、中堅企業のデジタル変革を推進する支援プログラムである。デル・テクノロジーズと奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)が共同で推進している。中堅・中小企業に対して、AI、ブロックチェーン、IoTなどを学ぶ講座や、プログラミング技術の習得支援などを提供している。2020年10月7日に企業参加型のコンテスト「中堅企業DXアクセラレーションプログラム 本選」を開催し、12社が参加した。
2021年2月3日には、第1回中間報告としてコンテストの上位入賞9社が登壇し、各社の取り組みを説明した(関連記事:日本の中堅企業が挑むデジタル変革─DXアクセラレーションプログラム受賞9社の取り組み)。同年5月13日には、第2回の中間報告会を開催(関連記事:日本の中堅企業が挑むデジタル変革─DXアクセラレーションプログラム受賞9社が第2回中間報告)。今回、第3回の中間報告会を開催した。
中韓報告会に登壇したコンテスト上位9社は、登壇順に、CDISC-SDTM Blockchain Team、イグス、ヴィッツ、ピーチ・ジョン、平井精密工業、水上、アズワン、レニアス、ユーネットランスである。
臨床データをブロックチェーンで共有
CDISC-SDTM Blockchain Teamは、複数の製薬会社やシステム会社で構成する合計8人のチームである。臨床データをブロックチェーンで共有する取り組みを進めている。患者自身の権限でデータ共有を拒否できるようにする。
第1回中間報告の時点では、ブロックチェーンの適応案を議論し、関連技術を調査していた。第2回中間報告の時点では、システムの実装方法を検証していた。現在も、引き続きシステムの実装方法の仕組みを検証している(図1)。
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検証を進めている仕組みは、ブロックチェーン(Ethereum)に、P2P型の分散ファイルシステムであるIPFS(Interplanetary File System)と、公開鍵暗号方式の一種であるABE(属性ベース暗号)を組み合わせるというものである。臨床データをABEで暗号化してIPFSに格納し、IPFS上に存在するデータのハッシュ値や、データ利用者がデータにアクセスするために必要な情報を、ブロックチェーンに格納する。
なお、費用の一部を患者に還元する案については、実現のハードルが高いことからプロジェクトの対象外とした。
ERPデータのクリーニングに取り組む
ドイツの樹脂素材機械部品メーカー、イグス(igus)の日本法人、イグス(本社:東京都墨田区)は、ERP(統合基幹業務システム)を対象に、会社名と住所のデータクリーニング(名寄せ)に取り組んでいる。変換プログラムはPython言語で自社で開発した。変換情報を記述したCSVデータを利用してデータベースを更新するSQLを自動で生成する。
第1回中間報告時点で、会社名の変換プログラムの作成は完了していた。第2回中間報告時点では、住所データの変換に取り組んでいた。日本郵便のホームページからCSVファイルをダウンロードし、VB(Visual Basic)で作った変換プログラムで変換し、これを反映する。
第3回中間報告までに、会社名の更新処理プログラムの実稼働を開始している。効果として、それまで2.5時間をかけていた更新作業が10分程度で済むようになり、実働75日間で172.5時間の削減効果があった(図2)。
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住所の変換については、現在も取り組んでいる。日本郵便の住所データを正常データと問題データに切り分ける作業や、データを格納するデータベース(SQL Server)などを構築している。
生産設備の課題をデジタルツインで解決
組み込みソフトウェア事業などを営むヴィッツ(本社:愛知県名古屋市)は、生産設備の課題をデジタルツイン(仮想工場)で解決する仕組みを構築している。要素技術として、IoTデータ(位置データ)をトラッキングする技術、設備の安全標準やルールからの逸脱を予測する技術、AIによる群制御、などを利用する。
第2回中間報告の時点では、それぞれの要素技術を育成している途中だった。仮想工場を動かすための仮想サーバー環境は完成済みで、仮想工場を活用したアプリケーションとして、効率的な生産ラインや動線を自動で作成する仕組みや、原料供給の最適化などを考えていた。
第3回中間報告では、活動のアップデート内容を紹介した(図3)。実際の工場の視察などを実施した。デジタルツイン(仮想工場)については、AIによる群制御の進捗が1%から5%へと進んだという。
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AIで受注や在庫消費を予測
女性向け下着の通信販売会社、ピーチ・ジョン(本社:東京都渋谷区)は、AIを使った受注予測(EC、店舗)、在庫消費予測、顧客行動分析、SNS分析、市場分析、トレンド分析などに取り組んでいる。
これまでに、分析対象として扱えるデータを調査し、購買情報、在庫情報、ECサイトの検索データなどを挙げていた。その後も引き続き分析対象として扱えるデータを調査している。Pythonを使って、クラスタリングとデータの分類、相互相関係数などを調査している。
販売前の新商品に関する需要予測として、自然言語分析にも取り組んでいる。例えば、ECサイトに掲載している商品の説明文テキストをベクトル化して、コサイン類似度を測った。これにより、商品同士の類似性を、販売前に知ることができた。
現在では、サービスサイトのWebフロント画面をデザインしている(図4)。
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●Next:平井精密工業、水上、アズワン、レニアス、ユーネットランスの取り組み進捗
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