[調査・レポート]
マイナンバーカード利用の現状と課題、普及に向けてデジタル庁に求めること
2021年9月15日(水)松岡 功(ジャーナリスト)
2021年9月1日に発足したデジタル庁。“行政DXから始まる日本のデジタル化”を掲げる同庁にとって最も重要な仕事になるのが、マイナンバーおよびマイナンバーカードを普及させ、活用できるようにすることだ。そのマイナンバーカードについて、NTTデータ経営研究所が先頃、利用動向における意識調査の結果を発表した。本稿ではそのエッセンスを紹介すると共に、マイナンバーカードの普及・活用について考察したい。
「マイナンバーカード(個人番号カード、写真1)は、我が国の公的身分証明書の1つとしてだけでなく、様々なサービスと連携して国民の利便性を高めることが期待される有用な社会インフラの1つである」(NTTデータ経営研究所)──。折しも2021年9月1日に発足したデジタル庁にとって、マイナンバーカードの普及は、「日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)」推進に向けた大命題の1つとなるだろう(関連記事:デジタル庁が2021年9月1日に発足、組織の縦割りを廃し、国全体のデジタル化の主導を宣言)。
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ただし、デジタル化が進む海外諸国では、同様の国民IDカードの普及率が80%以上あるのに対し、日本のマイナンバーカードの普及率は36%にとどまっているのが現実だ(「マイナンバーカード普及状況ダッシュボード」より)。「今後の普及拡大に向け、マイナンバーカードによる利便性の高いサービスの検討と導入が不可欠」(同社)となっている状況だ(関連記事:新型コロナ政策で浮き彫りとなったマイナンバー制度の欠陥、行政手続きにこそサービス思考を)。
このマイナンバーカードの利用について実際、利用者はどうとらえているのか。NTTデータ経営研究所が、NTTグループの調査機関を通じて行った意識・利用動向調査「多様な民間サービスでの活用促進に向けたマイナンバーカード意識調査」の結果を公表している。全容については調査レポート本体をご覧いただくとして、本稿では同調査のエッセンスを紹介するとともに、マイナンバーカードの今後の普及・活用のカギを探ってみたい。
マイナンバーカード取得済み/申請中が半数を超える
NTTデータ経営研究所のマイナンバーカード意識調査は、20~60代の一般利用者(有効回答者数:1079名)を対象に、2021年6月22日~同月24日の期間で実施された。結果は4つのテーマからなる。以下、順番にエッセンスを紹介していこう。
1つ目は、「マイナンバーカードに対する認識」である。マイナンバーカードの取得状況は、すでに取得済み(申請中を含む)の回答が54.3%と最も多く、次いで取得意向がなく取得していない回答(32.3%)、取得意向があり取得予定の回答(13.3%)の順となった。上述したように現在の普及率は35%程度なので、この調査の回答者はそれより2割ほど高いかたちとなっている。
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2つ目は、「マイナンバーカードを活用した既存サービスに対する反応」である。現在のマイナンバーカードで利用できるサービスの利用意向について、公共と民間サービスごとに利用したいサービスがあるかを尋ねたところ、それぞれで「特にない」を選択した回答者が46.3%、71.5%と最も多く、国民のニーズを十分に満たした既存サービスが少ないことを示している(図1、図2)。
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NTTデータ経営研究所は、デジタル庁創設の目的の1つに掲げられている「デジタル活用により、一人ひとりがニーズにあったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を挙げ、「このビジョンに向けて、今後新規サービスを開発・導入する上で国民のニーズ調査を行うことが肝要である」としている。
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