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[DX推進に不可欠な「デジタルリスクマネジメント」の要諦]

データアナリティクスにおける“攻め”と“守り”:第4回

2021年9月22日(水)安田 壮一(KPMGコンサルティング リスクコンサルティングサービス ディレクター)

業種を問わない至上命題であるデジタルトランスフォーメーション(DX)。その機運と共に、テレワークやペーパーレス、ワークフローなどの導入・刷新が急速に進む中で、これまであまり顕在化しなかったリスクへの対処が大きな課題となっている。DXにおけるデータ活用の取り組みでは、“攻め”と“守り”の両方の視点からの検討が求められている。特にコロナ禍で注目度が増しているのが“守り”の視点でのデータアナリティクスで、遠隔からのリスク管理にまつわる諸課題への対処が欠かせない。本稿では、デジタルリスクマネジメントの下で求められるデータアナリティクスの“攻め”と“守り”の考え方、構築体制、ユースケースなどについて解説する。

データ活用における“攻め”と“守り”の視点

 企業経営では成長やビジネスモデルの変革を志向した“攻め”と、成長の持続可能性を志向した“守り”の両輪が重要と言われるが、この点はDXやデータドリブン経営への変革プロセスにおいても同様である。データアナリティクスにより目指すべきビジネス目標としても、売上や利益の創出と、リスクマネジメントの高度化の両方の視点が考えられる。

 図1は、企業がデータアナリティクスを活用する際の“攻め”と“守り”の視点を例示したものである。“攻め”の領域においては、経営企画部門、人事部門などがマーケティングや人材配置・採用・育成などにデータアナリティクスを活用することで、新たなニーズや事業機会の発見、提供するサービスの自動化や低コスト化、業務効率化やリモート化などの効果が期待できる。

 一方、“守り”の領域においては、リスク管理部門、コンプライアンス部門、内部監査部門などが安全・衛生管理や労務管理などにデータアナリティクスを活用することで、リスクやコンプライアンス違反の網羅的な検知や、リスク管理策の自動化や低コスト化などの効果が期待できる。

図1:データを活用する際の“攻め”と“守り”の視点
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 ちなみに、“攻め”と“守り”の視点では、それぞれデータの活用目的が異なるものの、実際に分析するデータは共通することも多い。例えば、業績評価や勤怠管理などの人事・労務系のシステムから得られるデータは、人材配置や採用・育成に関する過去の取り組みの成功例や課題などを分析することで、新たな戦略を策定する上でのインプットとして活用される。一方、従業員の労働時間や残業時間、退職率などの指標を分析することで、36協定などのコンプライアンス違反や、サービス残業の兆候を把握することにも活用されている。

 このような“攻め”と“守り”の視点は、AIやIoTなどの新技術の導入により得られるデータにおいても重要となる。例えば、外食・小売などの店舗ビジネスにおいては、監視カメラから取得した画像データの活用が進んでいる。

 図2は、監視カメラのデータ活用例を“攻め”と“守り”の視点から整理したものである。監視カメラはもともと不審者の検知や証拠画像保存などの防犯効果、つまり“守り”の視点から導入された技術だが、AIを用いてその画像データを解析することで、店舗管理部門等が来店客の人数や属性、棚前の滞在時間などを推定し、マーケティングや店員の接客支援などの“攻め”の目的で利用することが可能になっている。

 また、来店客数から混雑度を推定してWebページやアプリなどを通じて顧客に情報を発信することで、客数が少なくコロナ感染リスクが低い時間帯での来店を促すなど、新たな“守り”、つまりリスクマネジメント目的での活用方法も生まれている。

図2:“攻め”と“守り”の視点からの監視カメラのデータ活用例
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●Next:“守り”の視点でのデータアナリティクス活用例とリスク低減のコツ

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