[市場動向]
今、デジタル推進でCIOが注力すべき3つのアクション─ガートナー
2022年4月15日(金)神 幸葉(IT Leaders編集部)
米ガートナー(Gartner)の日本法人、ガートナー ジャパンは2022年4月14日、「日本企業のCIOが2022年にデジタル・ビジネス推進に向けて注力すべきアクション」と題した提言を発表した。CIOとIT部門の役割、人材と組織、ITコスト管理の3つの観点から、2022年に注力すべきアクションを解説している。
CIOとIT部門の役割へのアクション─エコシステム全体で戦略を確立する
CIOとIT部門の役割は、独立した「システムの巨塔」から、事業部に寄り添う「パートナー」に急速に変化している──。ガートナー ジャパンによれば、IT部門以外で、社内外向けシステムの構築や情報分析といった従来のIT業務をこなす「ビジネステクノロジスト」が増えつつあるという。
同社 バイス プレジデント 兼 ガートナー フェローの藤原恒夫氏は、CIOとIT部門がビジネステクノロジストと協働・共存関係となっていくことの必要性を指摘。そのうえで、「事業部との関係強化、パートナーやスタートアップ企業、場合によっては顧客や競合他社をも含むエコシステムの中で多分野混成チームを形成し、ガバナンスや企画・設計・構築・運用に貢献し、提案と交渉を積み上げて信頼関係の構築が求められる」(藤原氏)と、今後のCIOとIT部門のあり方を説く。
藤原氏は一方で、日本企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の大きな障壁の1つとして組織文化の問題を挙げている。
同氏は、IT部門という組織体には、イノベーション創出のために、現場でリスクを取って創造や探求が行える文化やスキルの構築が必要であることを指摘。そこで培うデータ活用/分析の能力を生かし、データに基づくコミュニケーションや意思決定を行うような文化が重要だと説明している。
しかしながら、日本企業の多くは、ITベンダーへの依存度が高く、高度なITスキルを持った人材が欧米に比べて少ないことが、経済産業省の調査から浮き彫りになっている、と同氏。「CIOとIT部門は、内製化およびアウトソース、IT子会社を含めたグループ企業全体のIT組織の役割の整理と再定義することが重要。そのために、ベンダーやパートナーも含めたIT関連全体の役割分担を見定め、エコシステム全体で戦略の確立が求められる」(藤原氏)。
人材と組織へのアクション─CIOが社内人材の成長や活躍を主導する
多くのIT部門がIT人材の強化を計画するが、人材獲得競争が激化し、計画通りのキャリア採用ができずにいる。CIOは、外部人材の獲得と同時に、社内人材を成長・活躍・定着させていく必要があると同社は述べている。
同社 ディスティングイッシュト バイス プレジデント 兼 ガートナー フェローの足立祐子氏は2022年の人材と組織の取り組みについて、「全社的なスキルの保有と分散方法」「パンデミック以降のIT組織の健康状態」「従業員価値提案(EVP)」の3つを推奨する。
全社的なスキルの保有と分散については、ビジネステクノロジストも含めたテクノロジー人材のスキルの向上と役割分担の明確化を挙げている。
「デジタル戦略とビジネス部門の関係性によって、IT部門の目指す方向と役割を明確にし、両部門に必要なスキルと能力の整理が重要だ」と足立氏。これにより、IT部門は最低限必要なスキルと能力の開発に集中できるだけでなく、全社レベルでのテクノロジー対応力が向上するとしている。
また、リモートワークが新しい働き方として定着する一方で、心身の不調による労働生産性の低下などの問題が顕在化していることを同氏は指摘。ガートナーが2020年11月~12月に実施した調査では、日本企業の場合、「生産性が低下した」と回答した従業員の割合が最も高かった(関連記事:日本のデジタル活用スキルの自己評価は9カ国中最下位、在宅勤務で生産性が低下─ガートナー)。
同調査では、IT部門の従業員は給与以外に、成長やキャリア機会、同僚や上司の能力を重視すると同時に、不満にも思っていることも明らかになっている。
足立氏によると、「自社にとってのEVPの要素を特定し、データを基に満足度を向上させることで、従業員の定着率の改善や、外部の優秀なIT人材の獲得も可能になる。日本のCIOは2022年、IT人材の役割と責任を見直し、魅力的かつ現実的なEVPの要素を設定し、IT部門のチームを再構築に取り組むとよい」と指摘している。
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