[事例ニュース]
ハミガキの組成・物性情報をAIが提案、製造プロセス上の課題を解決─ライオン
2022年4月20日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)
ライオンと日立製作所は2022年4月20日、ハミガキ製品の製造プロセス上最適となる組成情報や物性情報の案を自動で提案するシステムを開発したと発表した。研究所で開発した新たなハミガキの組成を基に、実際に工場で生産する際に生じる課題を事前に予測する仕組みである。同システムを他の課題にも適用することで、製造プロセスの検討時間を最大で約40%削減できると見込んでいる。
ライオンと日立製作所は、ハミガキ製品の製造プロセス上最適となる組成情報や物性情報の案を自動で提案するシステムを開発した。研究所で開発した新たなハミガキの組成をもとに、実際に工場で生産する際に生じる課題を事前に予測する仕組みである。同システムを他の課題にも適用することで、製造プロセスの検討時間を最大で約40%削減できると見込んでいる(図1)。
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ライオンの知見やデータを基に、物性を予測するモデルを構築した。原料配合量の組み合わせや物性測定データなどのサンプルデータに対して、日立のマテリアルズ・インフォマティクス技術(AIやデータ解析によって新材料や代替材料を効率的に探索する手法)を適用した。
同モデルを活用し、研究所で新たに開発したハミガキの組成や物性の情報から、移送性(ハミガキの流れやすさ)を事前に予測する(移送性が悪いと、製造したハミガキを個々のチューブに充填しにくい)。さらに、目標とするハミガキの物性値(移送性など)から逆解析することで、最適な組成情報や物性情報の候補を自動で提案する。
同システムにより、組成開発の初期段階で、製造プロセス工程の課題を事前に予測可能になる。製造の妨げとなる事象の発生率の低下に貢献する。さらに、他の課題についても適用範囲を広げていくことで、最大で従来の開発業務時間の約40%を削減できるとライオンは見込んでいる。今後、同システムをより多くの生産課題や品質予測に活用するほか、他製品の製造プロセスへの応用を視野に検討を進める。
日立は、コンピュータ解析によって新材料や代替材料を探索するマテリアルズインフォマティクス(MI)を適用した「材料開発ソリューション」を展開している。今回、ライオンの主幹事業であるハミガキの開発において、製造プロセスを開発する際に課題となる移送性の解決に向けて、同サービスを導入した(関連記事:三菱ガス化学、半導体の新素材探索精度をAIで向上、探索に必要な実験時間は30~50%短縮)。