[市場動向]

産総研とNTT、シリコン光集積回路のみで作動するニューラルネットワーク演算技術を開発

デジタル電子回路を補完するAIアクセラレータに応用可能

2022年6月30日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)

国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、NTT、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の3者は2022年6月29日、シリコン光集積回路のみで作動するニューラルネットワーク演算技術を開発したと発表した。光伝搬のみで演算できることから、低遅延かつ消費電力の少ない演算が可能になる。デジタル電子回路を補完するAIアクセラレータへの応用が期待されるとしている。

 産業技術総合研究所(産総研)とNTTは、科学技術振興機構(JST)の支援の下、電子回路ではなくシリコン光集積回路のみで作動するニューラルネットワーク演算技術を開発した。光集積回路に光を伝搬させるだけで演算が完了する。デジタル電子回路のような逐次スイッチングが不要であることから、電子回路の1000分の1以下の遅延時間かつ数十分の1の消費電力で済む(写真1)。

図1:製作した回路チップの外観(写真左)と、演算機能評価用に光ファイバと電気配線を実装したモジュールの外観(写真右)図1:製作した回路チップの外観(写真左)と、演算機能評価用に光ファイバと電気配線を実装したモジュールの外観(写真右)
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 開発の背景として、現在のAI処理システムが使うGPUなどのデジタル演算プロセッサには消費電力や演算遅延で課題があることを挙げる。「例えば、512個のGPUで構成するAI処理システムは12万ワット以上の電力が必要。また、小規模なシステムを使うエッジコンピューティングにおいては、画像認識などのAI処理においてミリ秒程度の遅延が発生している」という。

 こうした経緯から近年では、デジタル演算によらない、低消費電力かつ低遅延でデータを処理可能なAIアクセラレータの研究が進んでいる。技術候補の1つとして、光集積回路を用いた光ニューラルネットワーク演算を挙げている。パラメータを固定した光集積回路に光を伝搬させるだけで演算が完了する仕組みである。

 一方、現在の光ニューラルネットワーク演算回路は、光を用いた非線形性応答デバイスの集積が困難であることから、光信号を電気信号に変換して電子回路によるデジタル演算で処理するハイブリッド構成にならざるをえなかったと産総研らは説明する。光集積回路のみでニューラルネットワーク演算を実現する技術の開発が望まれていたという。

●Next:カギを握るシリコンフォトニクス技術

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