スイスIMD(国際経営開発研究所)は2022年6月15日、「IMD世界競争力ランキング2022」を発表した。今年のランキングでは、“サステナビリティファースト”に邁進するデンマークが北欧国では初めてとなる首位を獲得した。日本は前年31位から3つランクを下げて34位だった。IMDは、新型コロナウイルス政策の違いやロシアによるウクライナ侵攻などが競争力に影響が及んだ国も多く現れたとしている。
スイスの研究調査機関/ビジネススクールであるIMD(International Institute for Management Development:国際経営開発研究所)が2022年6月、「IMD世界競争力ランキング(World Competitiveness Ranking:WCR)2022」を公開した。WRCは、IMDの研究部門の1つである世界競争力センター(World Competitiveness Center:WCC)が担当。各国の経済競争力に関する年次報告書『IMD世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook)』(1989年初版)の最新版で発表している。
ランキングの算出にあたって、4つのメインファクター(経済パフォーマンス、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラ)と、それぞれにサブファクターが細かく設定されている。WCR 2022では、IMDが取得・分析した2021年までのデータに独自調査の回答を加え、63カ国の国際競争力を算出しランク付けしている。調査元のデータは、WCCのグローバルパートナー機関56団体(政府機関、商工会議所、大学・研究機関など)と同スクールの卒業生約2000人によって収集されたものだ。
環境対策や財政強化を成功させたデンマークが初の首位に
デンマークが北欧国で初の首位となった。同国は過去5年間、6位→8位→2位→3位と推移してきた、ランキング上位常連国である。図1のグラフにあるように、以前は弱かった経済パフォーマンス指標が2020年より急上昇し、2022年の今年に1位獲得をはたしている。
2位は前年1位のスイスで、3位は前年5位のシンガポールがつけている。以下、4位スウェーデン(同2位)、5位香港(同7位)が続き、トップ5の顔ぶれとなっている。また、フィンランド、ノルウェーもトップ10にランクインし、WRC 2022では北欧勢の競争力の高さが際立つ結果となった。
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首位のデンマークの“強さ”はどこから来るのか。IMDは、今回の調査ではインフレの圧力により、多くの国で社会環境に関する課題が後回しにされている実情が浮き彫りになったとしている。そうした中で、デンマーク政府はサステナビリティファーストを掲げて、環境問題に対し、10年後に温室効果ガス排出量を2030年までに70%削減(1990年比)という目標に向かっている。WCCディレクターのアルトゥーロ・ブリス(Arturo Bris)氏は、「デンマークはサステナビリティの面で積極的に活動しており、欧州市場の中で小国であることがむしろ有利になっている」と説明している。
また、IMDによると、デンマークは国際投資の改善にも力を注ぎ、政府の効率性、特に制度的枠組み(2位)、ビジネス法制(3位)、社会的枠組み(2位)のサブファクターにおいて上位を堅持し、ビジネスの効率性、生産性と効率性、マネジメントプラクティスはいずれも1位の評価を得ている。
WCCリサーチスペシャリストのマルコ・ピスティス(Marco Pistis)氏は、デンマークの経済パフォーマンスの高さについて次のように分析する。「同国への投資フローの増加のほか、他の先進国と比較して物価上昇が抑えられていることから、公的債務と政府赤字が減少し、財政の強化をはたしている」。さらには、デンマークの出生時平均寿命や国民皆保険制度の指標など、健康関連の指標が改善されたことも経済パフォーマンスの高さにつながったという。
一方で、日本のランキングは34位だった。前年までの推移を見ると2019年が30位、2020年が34位、2021年が31位で、WRC 2022では3つランクダウンとなってしまった。IMD 北東アジア代表の高津尚志氏によると、日本はWRC開始当初の1989年から1992年まで4年連続1位だったのが、その後徐々に降下し、2019年以降は30位台に甘んじている状況だ。(関連記事:IMD世界競争力ランキング34位─日本が抱える最大の課題は「ビジネスの効率性」)。
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