[市場動向]

日本企業のDXを阻む諸課題、「ITコスト構造の変革」は待ったなし─日本オラクル

2022年7月13日(水)神 幸葉(IT Leaders編集部)

日本オラクルは2022年7月7日、2023年会計年度(2022年6月~2023年5月)の事業戦略を発表した。同社 取締役 執行役 社長の三澤智光氏は、「日本のトランスフォーメーションとITの進化」を阻む諸課題を挙げ、Oracle Cloudがそれらをどう解決していくかを、5つの重点施策として説明。なかでも「ミッションクリティカルシステムの近代化」「ビジネスプロセス全体のデジタル化」の2つに焦点を当て、OCIやOracle Cloud Applicationsの特徴と優位性をアピールした。

「日本のトランスフォーメーション」を阻むもの

 日本オラクル 取締役 執行役 社長 三澤智光氏(写真1)は説明会の冒頭、「日本のトランスフォーメーション」における現状認識として以下を挙げた。

●米国など先進国と比較し、名目GDPとIT投資が約20年間でほとんど成長していない
●IT投資の割合が既存保守8割/新規投資2割と、変革に向けた新たな施策を展開するための予算比率が低い
●ソフトウェア導入におけるIT受託開発の割合が自社開発やパッケージ導入に対して大きい
●IT人材がベンダー7割、ユーザー企業3割とベンダー側に集中している
●労働生産人口は減少の一途である

 三澤氏は、日本企業がこれらの課題を乗り越えてデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向かうにあたって、マクロの視点からは、「ITコスト構造の変革」と「デジタル化による業務の自動化」が必要であるとした。そして、ミクロの視点からは、「変化に追随できない複雑なシステム」「ビジネス価値が希薄な基盤更改」「事業継続リスクを抱えた基幹システム」「行き過ぎたクラウド神話」という、企業の情報システムにおける5つの課題を挙げた。これらが重なり合って情報システムが足かせとなり、DXに向かうことすらできないでいる、という指摘である(図1)。

写真1:日本オラクル 取締役 執行役 社長 三澤智光氏
図1:日本企業の情報システムが抱える課題(出典:日本オラクル)
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 現状の課題を整理した後、三澤氏は2023年度の日本オラクルの重点施策として、以下の5つを挙げた。

●ミッションクリティカルシステムの近代化
●ビジネスプロセス全体のデジタル化
●安全、安心で、豊かな暮らしを支える社会公共基盤の実現
●社会・企業活動のサステナビリティを加速
●ビジネスパートナーとのエコシステムを強化

 発表会では、これらのうち「ミッションクリティカルシステムの近代化」「ビジネスプロセス全体のデジタル化」の2つに焦点を当てて、現在の取り組みと今後の展開が説明された。

ミッションクリティカルシステムでのOCIのアドバンテージ

 ミッションクリティカルシステムの近代化について、三澤氏は、IaaS/PaaSの「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」の採用が国内で加速したとして。大日本印刷、三井不動産、東芝、野村総合研究所、NTTドコモといった大手企業での導入事例を紹介した(図2、関連記事:東芝、5万人以上が使うグループ95社の財務会計システム/BIシステムをOracle Cloudに移行)。

図2:Oracle Cloud Infrastructureを採用した主な企業(出典:日本オラクル)
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 オンプレミスと比較したクラウドのメリットとして、一般にリソースの迅速・柔軟な調達、フレキシビリティ、スケーラビリティ、課金体系(サブスクリプション)などがある。三澤氏は、これらに加え、OCIはミッションクリティカルシステムの稼働を担いながら、定期的なパッチ適用、データベースの暗号化、更改コストの削減や自動化による運用コストの削減を図れること、非機能要件を満たしたデータ基盤の移行が可能なことをアピール。加えて、「パートナー企業との先行プロジェクトを通じて蓄積してきた、最新テクノロジーのデリバリーの実績」を強調した。同氏によると、ミッションクリティカルシステム以外にもHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)やスマートシティなどの領域においてもOCIの採用が広がっているという(関連記事SUBARU、車両設計シミュレーションシステムをオンプレミスからOracle Cloudに移行)。

 続いて、最近(2022年6月)のアップデートとして、企業の自社データセンターをOracle Cloudのリージョンとして利用可能にする「OCI Dedicated Region」の新しい利用体系や、コンピュート環境の顧客専用クラウド「Compute Cloud@Customer」の分散クラウドサービス拡張が紹介された。

 OCI Dedicated Regionは、「顧客がみずからの環境でデータ主権を実現する」専有型のIaaSで、全サービスを利用可能なOracle Cloudリージョンを顧客のデータセンター内に構築するというもの。第1号ユーザーとなった野村総合研究所や英ボーダフォン(Vodafone)などが導入している。6月のアップデートにより、最小12ラック、年間100万米ドル(約1億3000万円)から利用可能になった。三澤氏は、「この規模・料金であれば、多くの企業で現在利用するIaaSの代替候補に挙がるだろう」と期待を示した(関連記事Oracle Cloudをオンプレミスに置ける「OCI Dedicated Region」が小規模対応、12ラック100万ドルで導入可能に

●Next:Oracle Cloud Applicationsのアドバンテージとは

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