[市場動向]

シーメンス、日産の新EV生産ライン構築を支援、製造工程全体のデジタル化へ

「ソフト/ハード能力をインダストリアルメタバースに載せる」─新基盤「Xcelerator」を紹介

2022年9月6日(火)河原 潤、神 幸葉(IT Leaders編集部)

独シーメンス(Siemens)の日本法人は2022年8月30日、日産自動車のクロスオーバーSUV型EV(電気自動車)「アリア」を製造する栃木工場で、EV生産ラインの立ち上げ支援を行うことを発表した。発表会では、来日した独シーメンス 取締役 デジタルインダストリーズCEOのセドリック・ナイケ氏が協業の説明に加えて、「ソフト/ハード能力をインダストリーメタバースに載せる」として、2022年6月提供の「Siemens Xcelerator」プラットフォームを軸にした製造業のデジタル化についてアピールした。

「諸課題に柔軟に対処できる製造業モデルを確立すべき」

 シーメンスが、長年のパートナーである日産自動車との新たな連携を発表した。日産は、主力生産拠点の1つである栃木工場(栃木県河内郡)で、クロスオーバーSUV型EV「アリア(Ariya)」(写真1)の製造を開始するが、その生産ラインのデジタル化をシーメンスがトータルで支援する。

写真1:日産の「アリア(Ariya)」。同社初のクロスオーバーSUV型EVとして、2020年7月に発表され、2022年春より納車が始まった(出典:日産自動車)

 説明は、来日した独シーメンスの幹部によって行われた。同社 取締役 デジタルインダストリーズCEOのセドリック・ナイケ(Cedrik Neike)氏(写真2)は、背景にある気候変動、新型コロナウイルス、国家/地域紛争など世界を取り巻く諸問題を挙げ、「柔軟性をもって問題に対処できる製造業モデルを確立する必要がある」と指摘した。

写真2:独シーメンス 取締役 デジタルインダストリーズCEOのセドリック・ナイケ氏

 続けてナイケ氏は、ドイツ製造業の変革を象徴するIndustrie 4.0について触れ、次のように語った。「今日の製造業は、自社の生産のみならず、サプライチェーン全体を効率よく、クリーンなものにしていかなくてはならない。その正確なシミュレーションや測定のためには、リアル世界であるインダストリーとサイバー世界/デジタルを双方向でつなぐことが必要だ。Industrie 4.0が両者をつなぐカギになる」(関連記事世界の製造現場とつながる場を─シーメンスがデジタルツインなどの検証施設「DEX Tokyo」をオープン)。

 取り組みのキーテクノロジーの1つがメタバースで、ナイケ氏は「インダストリアルメタバース」と表現。製造業をはじめとする産業のデジタルツインに強みを持っている同社にとって、ますます不可欠な要素になるという。「インダストリアルメタバースを駆使したデジタルツインでは、メタバース上の工場で直面した問題が、直ちにリアル世界の工場の問題解決や最適化につながる」(ナイケ氏)。

デジタル技術・ノウハウ・パートナーを包含する「Xcelerator」

 そのうえでナイケ氏は、シーメンスが2022年6月に提供を開始した「Siemens Xcelerator」を紹介した。同社がオープンデジタルビジネスプラットフォームと呼ぶXceleratorは、IoTシステムを構成するハードウェア/ソフトウェアポートフォリオと、顧客、パートナー、開発者がマーケットプレイスなどを通じて連携するエコシステムを包含している。プラットフォームであり、ビジョンでもあると捉えられる(図1)。ナイケ氏は、「各コンポーネントはレゴブロックのようにモジュール化しており、組み合わせで必要な環境を構築できる」と、Xceleratorの開発容易性をアピールした。

図1:デジタルビジネスのためのプラットフォーム/ビジョンとしてSiemens Xceleratorを紹介(出典:独シーメンス)

 また、グローバル・セールス&カスタマー・サクセス担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのロバート・ジョーンズ(Robert Jones)氏(写真2)は、「15年前より、買収をはじめ多大な投資を続けてきたが、それらがXceleratorに結実した(図2)。本当の意味でのDX推進には、テクノロジーだけではだめで、パートナーエコシステムが重要になる」と補足。なお、ジョーンズ氏によると、同社が提供する既存のIoTプラットフォームとして「Siemens MindSphere」があるが、今後、MindSphereはXceleratorの一部に位置づけられるという(関連記事「競争より共創」を地で行く独シーメンス、種々のデジタル施策)。

写真2:独シーメンス グローバル・セールス&カスタマー・サクセス担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのロバート・ジョーンズ氏
図2:シーメンスが過去15年間に行ってきたM&A(出典:独シーメンス)
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●Next:Xceleratorの技術・ノウハウを日産の新EV製造ラインに投入

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