[新製品・サービス]
日立、疑似量子コンピュータ「CMOSアニーリング」のクラウドサービスを提供
2022年10月3日(月)日川 佳三(IT Leaders編集部)
日立製作所は2022年10月3日、「CMOSアニーリング クラウドサービス」を提供開始した。組み合わせ最適化問題を高速に解く同社の「CMOSアニーリング」を月額制のクラウドサービスとして提供する。CMOSアニーリングのシステム基盤をSaaS型で提供するとともに、アプリケーションまで一括で提供する。これにより、各種の業種・業態の実業務で迅速に利用を始められるようにする。これまでもデータを渡すことでCMOSアニーリングの計算結果を返すSaaSは提供していたが、今回新たに、CMOSアニーリングの実行環境をSaaS型で提供した。価格は、個別見積もり。
日立製作所の「CMOSアニーリング クラウドサービス」は、組み合わせ最適化問題を高速に解く同社の「CMOSアニーリング」を、月額制クラウドサービスの形態で提供するものである。アプリケーションを含めたCMOSアニーリングのシステム基盤をSaaS型で提供する。これにより、各種の業種・業態の実業務において、手軽かつ迅速に利用を始められるようにした(図1)。
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CMOSアニーリングは、量子コンピュータの一種で組み合わせ最適化問題を高速に解く“量子アニーリング”の仕組みを、通常のCMOS半導体の上に疑似的に再現した技術である。特徴は、FPGAで実装したチップ同士を相互に接続することで、解くべき問題の規模に応じて性能を拡張できること(関連記事:日立、名刺サイズのCMOSアニーリングマシン、エネルギー効率は汎用PCの約17万倍)。
日立はこれまでも、データを渡すことでCMOSアニーリングの計算結果を返すSaaSを提供してきた。例えば、「勤務シフト最適化ソリューション」は、条件を満たす勤務シフトを作成するサービスである。Webブラウザを介してデータ(日付・時間、必要人数、有給休暇などの勤務希望など)を入力すると、計算結果としてのシフト表が得られる(関連記事:日立、数百人規模の勤務シフトを作成するクラウドサービス、量子コンピュータを疑似的に再現)。
今回、CMOSアニーリングの計算環境(ハーフドウェア/ソフトウェア)を自由に使えるシステム基盤をクラウド型で提供開始した。ソフトウェア基盤として、コンテナ開発・運用プラットフォーム「Red Hat OpenShift」を採用している。同社は今回のクラウドサービスの位置づけを「ユーザー側でCMOSアニーリングを活用できる手軽なSaaSサービス」と説明している。
業務アプリケーション群も合わせて提供する。金融のポートフォリオ最適化や勤務シフト最適化のアプリケーションからスタートし、順次アプリケーションを拡充していく。在庫管理や渋滞解消など、同サービスで提供する業務アプリケーション群の拡充に向けて、自社での開発やパートナーとの協創を進めていくとしている。
なお、SaaS型で利用可能なCMOSアニーリングの実行環境としては、技術者の育成などを目的に無料で提供している「Annealing Cloud Web」もある。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けて開発したものであり、2018年から提供している(関連記事:日立、アニーリングマシンをクラウドで無料提供、チュートリアルやデモプログラムも用意)。