[市場動向]

経営危機から13年、日立が取り組み続けた組織変革/人材戦略の軌跡

ジョブ型人材マネジメントへの転換をさらに推進

2022年10月24日(月)神 幸葉(IT Leaders編集部)

日立製作所は13年前の2009年、約7900億円の赤字という経営危機に陥り、事業方向性の転換を余儀なくされた。このときに打ち出されたビジョンや施策が今の日立を形成していると言える。同社は2022年10月12日、人材戦略に関する説明会を開き、経営変革と連動させる形で取り組んできた組織変革/人材戦略について、代表執行役 執行役専務 CHROの中畑英信氏が、2010年以降の施策を振り返りながら説明した。

2009年の経営危機から社会イノベーション事業に舵

 2009年、7873億円の赤字を出して経営危機に陥った日立製作所。これが経営改革のきっかけとなった。2010年、日立は製品、システムを主に国内を中心に提供するビジネスモデルから、IoT/AI/ビッグデータなどを含むサービスを付加価値として加え、グローバルに展開する「社会イノベーション事業」に舵を切った。

 日立製作所 代表執行役 執行役専務 CHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者) 兼 コーポレートコミュニケーション責任者の中畑英信氏(写真1)は、「顧客や社会の現在、将来のニーズを探すところから始め、根本的にビジネスの考え方を変えていく必要があった」と当時を振り返った。

 現在の社会イノベーション事業は、「顧客、社会の現在だけでなく、将来の課題解決を目指す事業」であると中畑氏は述べ、単に製品やシステムを提供するだけではなく、新たなイノベーションをサービスとして提供していくという現在のスタンスを改めて強調した(図1)。

写真1:日立製作所 代表執行役 執行役専務 CHRO 兼 コーポレートコミュニケーション責任者の中畑英信氏
図1:社会イノベーション事業の概要(出典:日立製作所)
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 社会イノベーション事業の中心に、デジタル技術を用いて顧客/パートナーと共にイノベーションを図る「Lumada(ルマーダ)」がある。中畑氏は、取り組みの一例としてイタリア・ジェノバでのLumadaスマートモビリティプロジェクトを紹介した。

 このプロジェクトで日立が目指したのはマルチモーダル交通である。車両や運行システムを提供するのにとどまらず、国内外のビジネスユニットやグループ企業が事業体横断でグローバルに連携し、ハンズフリー決済やデジタルツインなどのモビリティソリューションをトータルで提供している。

 2022年4月発表の2024中期経営計画でも、Lumada事業は同社のビジネス全体の中でも重要なポジションに置かれて、成長モデルが描かれている(関連記事ビジョン・取り組み・事例が示す、日立「Lumada」の現在位置)。

経営変革に連動した組織変革/人材戦略

 社会イノベーション事業の推進、グローバル事業の拡大を2010年代以降の経営戦略に据えた日立は、2011年から組織変革と人材戦略の刷新にも取り組んできた。求める人材、目指す組織(体制・文化)は次の4つである(図2)。

●現地マーケット(社会・顧客)を知る人材=様々な国籍・性別などの人材
●国・地域・事業主体を超えて、One Teamで業務遂行する組織体制
●社会・顧客の課題を的確に捉え、解決策を考えられるプロアクティブで自立した人材とその文化を持つ組織
●事業環境の変化を捉え、新たな事業ポートフォリオへ速やかに適応できる組織・人材

図2:日立製作所が目指している人材と組織(出典:日立製作所)
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 「従来の組織構成は日本人、男性が中心で、同じ場所で働くのが効率的とされていた。当社が目指しているのは、国籍、性別問わずに多様な人材が場所、時間を問わずに働ける組織である」(中畑氏)。

 グローバルな事業展開に伴い、海外事業の売上収益は、1999年の29%から2021年には59%まで増加した。従業員も買収・合併などで、外国人従業員がこの3年間で10万人増加し、現在は従業員の57%を外国人従業員が占めるという。日立は、社内の半分以上を占めるグローバル人材の環境整備にに取り組んでおり、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)や優れた人材の確保・育成を進めている(図3)。

図3:経営戦略に連動した人材戦略の全体像(出典:日立製作所)
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●Next:「日立100年」を見据え、変わる人材像と人材マネジメント

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