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[インタビュー]

Veeamが強調する「リカバリーに失敗しない」仕組みとは?─本社CTOに聞く

米ヴィーム・ソフトウェア シニアバイスプレジデント CTO、ダニー・アラン氏

2022年11月22日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

バックアップツールと言えば、企業情報システムでは昔から当然のように導入されており、機能的にも成熟したソリューションの1つだ。万一の障害に備えるべく求められる機能は明確であり、稼働後はツール任せでほとんど操作を必要としない。そんな縁の下の力持ち的な存在であることも手伝って、大きなシェアの変動は起きにくいはずのツールでもある。この分野の進化はどうなっているのか。米ヴィーム・ソフトウェア(Veeam Software)のシニアバイスプレジデント CTO、ダニー・アラン氏に話を聞いた。

 成熟しきった感のあるバックアップ/リカバリー製品市場で、過去10年ほどの間に老舗・定番ツールを差し置いて目立つ存在になったのが米ヴィーム・ソフトウェア(Veeam Software)である。米ガートナー(Gartner)が公表している「Magic Quadrant for Enterprise Backup and Recovery Software Solutions」では、3年以上にわたってリーダーポジションにある(図1)。

図1:企業向けバックアップ/リカバリーソフトウェアのマジッククアドラント2022年版(出典:米ガートナー「Magic Quadrant for Enterprise Backup and Recovery Software Solutions」)
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 当然、機能や使い勝手、料金、サポートなどのバランスがあってのことだが、それだけではない。特徴の1つとして以前からヴィームが強調したのがリカバリー機能である。

写真1:米ヴィーム・ソフトウェア シニアバイスプレジデント CTOのダニー・アラン氏

 「バックアップの問題の1つは何らかの障害が発生した時、リカバリーしようとしても戻らないこと。これではバックアップの意味がないが、Veeamならリカバリーする」(同社日本法人)。

 一定の納得感はあるものの、なぜそうなのかは今ひとつ分からない。つまりリカバリーが失敗する要因にはどんなことがあり、なぜVeeamならリカバリーに失敗しないと言えるのか、である。この点を同社シニアバイスプレジデントでCTOを務めるダニー・アラン(Danny Allan)氏(写真1)に聞く機会があった。要約すると、バックアップデータの持ち方に違いがあるという。

「リカバリーに失敗しない」仕組みとは

──単刀直入にお聞きします。バックアップのリカバリーに失敗するケースがあるのは周知の事実ですが、Veeamはちゃんと戻ると強調しています。他社のツールといったい何が違うのでしょう。

 ヴィームは市場の中でユニークな特徴を備えています。セルフディスクライブ(Self-Describing)によるデータ格納方式がその1つです。データが独立しているので、仮にVeeamの利用を止めてもリカバリーできます。

 これに対し他社は、集中的なインデックスカタログを使っています。このカタログが削除や暗号化、あるいは破損したりすると、データがあってもリカバリーできない状況に陥ります。例えばランサムウェア攻撃を受けた場合に備えて、バックアップデータをオフサイトに格納したとしても、インデックスカタログもそうしないと暗号化されてしまいます。

 我々がこのような格納方式を採用しているのは、バックアップデータのポータビリティを重視するため、言い換えるとベンダーロックインを望んでいないからです。Veeamを使い続けていただきたいのはもちろんですが、データのポータビリティはそれ以上に重要ですから。なお当社の顧客には「リカバリーできるかどうか、必ずテストをしてください」とお願いしています。バックアップだけしてリカバリーのテストをしない企業もありますが、それはやはり問題です。

──バックアップデータの格納方式が違うというわけですね。では、他社が採用しているインデックスカタログをVeeamはなぜ採用しないのでしょう?

 インデックスカタログの最大のメリットは重複排除機能にあります。中央一元的なカタログによってデータを管理することで、同じデータを複数のストレージに格納してしまう問題を防げるのです。

 一方、我々は重複排除を提供せず、ストレージシステムに任せています。例えばWindowsのReFS(Resilient File System)やLinuxのXFS (eXtents File System)のバックアップに、ネットアップ(NetApp)やピュア・ストレージ(Pure Storage)などのストレージ・アプライアンスの重複排除機能を使うわけです。

 この2社に限らず、多くのストレージベンダーはヴィームのパートナーであり、そういったベンダーは重複排除に長けた専門家です。そこでそうした企業のノウハウや知財を活用しつつ、我々はバックアップとリカバリーに専念しています。実際、デル・テクノロジーズのEMC製品やHPEも、また日立製作所や富士通も重複排除を提供していますからね。

──なるほど。では他のバックアップベンダーはなぜそうしないと? アランさんに聞くことではないかもしれませんが。

 私見ですが、バックアップ/リカバリー製品のベンダーは3種類に分けられると思います。まず、かなり昔から活動している老舗ベンダーです。20年、あるいはそれ以上の社歴があり、過去の技術の延長線上で活動しています。それからアプライアンス製品、つまりハードウェアを提供するベンダーがあります。いずれも、他社との差異化やキャッチアップのために、重複排除機能を提供する必要があります。

 違いは重複排除だけではなくて、老舗ベンダーのツールは最新のワークロード、例えばクラウドやコンテナ、Microsoft 365のようなSaaSなどに対応しないか、十分に対応できません。一方で、アプライアンス製品ベンダーではハードは自社製が中心です。ユーザー企業が導入済みの異なるベンダーのストレージとは共存しない面があります。

 3つ目が、我々のようなソフトウェアディファインドのベンダーです。ハードウェアではなくて、ソフトウェアに価値を置いています。仮想マシン(VM)はもちろん、コンテナなど最新のワークロードに対応しますし、先ほどお話ししたようにストレージ製品ベンダーとパートナーシップを組んでもいます。

●Next:主張か正しいかどうか「とにかくテストしてほしい」

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