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[データマネジメント2023]

現場が自発的にデータを活用する文化の醸成
「社内カスタマーサクセス」追求が原動力に

2023年4月13日(木)

全社的なデータドリブン経営を標榜して熱心に取り組んでいる一社がセゾン情報システムズだ。2023年3月9日に開催された「データマネジメント2023」のセッションに同社のキーパーソン2人が登壇。「社内カスタマーサクセス」に照準を合わせた情報システム部門が、これまで積み重ねてきた知恵や工夫が惜しみなく披露された。

「探し、活かす」ことに工数全体の7割を割く

 データから価値を引き出すためには、活用基盤やツールを整備するだけではなく、全社員がデータを使いこなすためのカルチャーを醸成することが重要だ。そうしたなか、全社員が自発的にデータを利活用して業務を改善できるようにする「データの民主化」を目指し、全社データドリブン・プロジェクトに取り組んでいるのがセゾン情報システムズだ。

 通信ミドルウェア「HULFT」の開発で知られる同社だが、2020年にはメタデータマネジメントプラットフォーム「HULFT DataCatalog」を、2023年には次世代クラウド型データ連携プラットフォーム「HULFTSquare」を提供し、データマネジメント分野でも存在感を強めている。社内システムについては2025年までに100%クラウド化を目指しているところだ。

 そんな同社は、2022年にすべての社員が自由にデータを扱えるように環境を整備すると共に、サポート体制も強化してきた。佐々木氏は「社内カスタマーサクセスを旗印に情シス部門が数々の工夫を凝らしてきたことにデータマネジメント成功の秘訣があります」と強調。取り組みから1年を経て、営業、マーケティング、品質管理など6つの部門において、データを活用した業務改善の例が増えてきていることを紹介した。

ITサポート部 佐々木 勝氏

 「データドリブン経営を支える基盤には、データを集め、溜め、探し、活かすためのすべての機能を搭載していることが必要条件。いつでも好きな時に自由に取り出せることで、日々業務の中で生まれたひらめきや仮説を検証できることが重要です。集める、溜めるはスタートに過ぎず、探し、活かす先にゴールがあります。探し、活かすことに全体の工数の7割を割きました」(佐々木氏)。

ユーザーを6階層のペルソナに分類

 DDPと呼ぶデータドリブン基盤を全社員が使えるようにするために、想定するユーザーをデータリテラシーの習熟度別に6階層のペルソナに分類していることも特徴だ。

図1 ユーザーを6階層のペルソナとして定義する
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 具体的には「超入門者」「入門者」「データ活用者(初級)」「データ活用者(上級)」「データサイエンティスト」「データエンジニア」で、各レベルのユーザーがDDPを利用するうえで必要な知識マトリクスも整理している。例えば、超入門者は、データを見て重要な判断を下すためにBIツールのスキルを必要とし、入門者は求める情報に自力でたどり着くためにデータカタログのスキルが必要になる。またデータ活用の上級者はこれら2つに加え、 ETLツールとSQLのスキルが必要になる。

 「これらを4種の神器と呼び、スキル教育を実施しています。3カ月を1クールとし、社内にいるツールのプロフェッショナルが講師となりセミナーを実施します。最後に総合演習を行い、4種の神器すべてを習得することをモチベーションに取り組んでいます。また、学習の補助ツールとして、週ごとにZoomで行う寺子屋、Slackを使った専用チャンネルでのQ&Aやディスカッション、復習動画を提供しています。教育だけでなく、隣の人の頑張りを見える化することで、社内のデータリテラシーを上げていく仕組みです」(佐々木氏)。

図2 DDPで活用している「4種の神器」の具体像
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 なお、総合演習課題を作成したのは、ITの専門知識を持っていなかったバックオフィスのメンバーだ。SQLの基礎から始めて、ETLツールの使い方を学び、Tableauでビジュアライズすることを3カ月の学習期間で実現したものだという。「本気でやればできることがあらためてわかりました」と佐々木氏は振り返る。

5段階の流れでユーザー体験に落とし込む

 実際にDDPは社員にどう活用されているのか。続いて登壇した細見氏は「4種の神器をユーザー体験に落とし込む5段階の流れがあります」と説明する。

マーケティング部 細見 征司氏

 「最初にDDPポータルサイト(SharePoint)で使い方を『学ぶ』ことから始めます。次に欲しいデータをデータカタログ(HULFT DataCatalog)で『探す』ことを経験。次にETLツール(DataSpider)で希望する形へと『整える』ところへステップアップします。その後、データマート(Snowflake)に『溜める』ことを経て、最後にBIツール(Tableau)で分析・可視化し『活かす』のです。この流れを情報システム部が縁の下で支えてくれています」(細見氏)。

 まず「学ぶ」では、ポータルサイトにDDPのコンセプト、利用申請、規約・ルール、データの鮮度など、利用者が迷わずに使い始められる情報が掲載されていて、利用者の学びを助けている。「探す」では、DDPに格納された様々なデータが、カタログ化され簡単に探し出せるようになっていることがポイントだ。「“社員”で検索して、統合社員マスタから実データを確認するなど、これまで情シスしかできなかったことも、データカタログが全社展開されたことで、社員が主体的に利活用できるようになりました」と細見氏は話す。

 「整える」では、DataSpiderの実行環境をクラウドに構築し、社員に提供されている。ノーコードで簡単にデータ連携できるため、Snowflakeに保存されているデータを読み取り・書き込み・変換・加工できる。

 「誰でも開発できるように、開発標準と開発テンプレートが提供されています。社員が自発的にデータを活用するためには、ETLツールが絶対に必要です。その利便性と安全性を両立するために、申請制にして情シスがガバナンスを効かせてくれています」(細見氏)。

図3 社員がデータを利活用する際の一連の流れ
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全社員が自発的にデータを利活用して業務を改善

 「溜める」で活用しているデータマートは、分析・可視化しやすい形にデータを加工して置いておく場所だが、これはSnowflakeのスキーマで、テーブル作成やデータ登録も利用者が自由にできることが特徴だ。Snowflakeは、DWHとデータマートで利用している。

 「DWHには重複のない正規化された汎用性の高いデータが入っています。これらを材料にして自分がやりたいことに特化したデータをETLツールで加工してデータマートに格納します。データマートはマスタをあてたり結合したりといった非正規化しておくことで、後工程でデータを使いやすくするものです」と細見氏は説明する。

 「活かす」ではデータを分析するTableau Creatorライセンスとデータを見るだけのTableau Viewerライセンスの2つを用意。Creatorライセンスを持つユーザーが分析・可視化したデータをViewerライセンスを持つユーザーと共有することでライセンスを持つ全員で情報を利用できるようにしている。

 「皆が自力で何でもできるわけではなく助けてもらいたい時もあります。チャットの何でも相談室で聞いたり、必要なデータがないときは情シスに依頼したりして、データを活用していきます。情シスも社内の活用事例を取材して社内報で公表するといった、ユーザー同士で称え合う環境づくりを進めています」と細見氏。
事例としては、会員登録数の自動集計によるレポート業務の省力化を実現したマーケティング部門でのケースや、事業部門のQCD最大化を支援するQM相談室(品質管理)がシステムからデータを直接吸い上げてプロジェクトモニタリングを実施したケースなどがあるという。

 そのうえで細見氏は次のように講演を締めくくった。「全社員が自発的にデータを利活用して業務を改善できるようにすることは決して平坦な道ではありませんでした。それを支えていたのは、情報システム部門の熱意ある対応、つまりは社内カスタマーサクセスへの飽くなきこだわりとチャレンジにほかなりません」。


●お問い合わせ先

株式会社セゾン情報システムズ

URL: https://home.saison.co.jp/
製品URL:https://www.hulft.com/software

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