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[技術解説]

複数の人事・人材管理システムをつなぐコンポジットアーキテクチャ─パトスロゴスの“HR共創プラットフォーム”とは?

2023年5月15日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

人的資本経営という用語に象徴されるように、企業の人事・人材マネジメントのあり方は大きな変革期に突入している。では、それを支える人事情報システムは、どう変革あるいは進化させればいいのか? この問題に対しパトスロゴスは、複数の人事・人材管理システムを適材適所で組み合わせて1つのサービスとして利用可能にする「PathosLogos」を開発した。同社は“HR共創プラットフォーム”と呼ぶが、いったいどんな仕組みなのか。

コンポジットアーキテクチャの課題

 企業を取り巻く経営環境は刻々と変わっている。顧客ニーズや法制度の変更、従業員のワークスタイル変革など、変化を促す要因を挙げれば切りがない。テクノロジーの進化、例えば従来のAIとは一線を画すChatGPTのような生成AIもその1つである。では情報システムを、そうしたさまざまな変化に柔軟かつ迅速に対応させるには何が必要だろうか。

 有力な手段の1つが「コンポジット(アプリケーション)アーキテクチャ」だ。コンポーザブルアーキテクチャとも呼ばれ、つまりはレゴブロックで何かを組み立てるのと同様に、システムを構成するモジュール部品を必要に応じて組み合わせたり、特定のモジュールを取り外して別のものに置き換えたりできる疎結合のアプリケーションアーキテクチャである。

 その実現に向けて、これまでさまざまな取り組みが実践されてきた。EAI(エンタープライズアプリケーション統合)やSOA(サービス指向アーキテクチャ)という考え方がそれであり、モジュールごとに異なるデータ形式や粒度の差異をEAIやESB(Enterprise Service Bus)で吸収する。最近では異なるシステムやサービスを簡単な手順で連携させるiPaaS(integration Platform as a Service)と呼ばれるサービスも増えている。例を挙げるとデータ連携中心の「ASTERIA Warp」「DataSpider Servista」、さまざまなSaaSを連携させて一連の処理を自動化する「Anyflow」「Zapier」「Workato」「Make」などである。

 しかし、EAIも含めてこれらの主な役割(機能)はデータの受け渡しやプロセスの呼び出しであり、肝心のデータがモジュール(サービス)側に格納される点で適用領域に限界がある。構築フェーズにおけるシステム連携やサービス連携には有効であっても、運用フェーズでモジュールを自在に置き換えるには難があるのだ。これを乗り越えるにはデータファブリック技術が必要とされるが、まだ発展途上である(図1関連記事「データファブリック」「データメッシュ」とは何か? データ統合の最前線を専門家に聞く)。

図1:コンポーザブルなビジネスアプリケーションのリファレンスアーキテクチャ(出典:ガートナージャパン)
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 そんな中、HRM(Human Resource Management)/HCM(Human Capital Management)に限られるものの、「これならコンポジットアーキテクチャを実装できる」と考えられるサービスが登場した。パトスロゴスが提供する「PathosLogos」である。

 パドスロゴスの設立は2020年10月で、創業者は牧野正幸氏。HRMを中核にしたERPパッケージ「COMPANY」の開発元、ワークスアプリケーションズの創業メンバーであり、HRM/HCM分野で長いキャリアを積んだ専門家である(COMPANYは現在、Works Human Intelligenceが提供)。一体、どんなものなのか? その概要を紹介する前に、HRM/HCMを巡る変化の状況を見ておこう。

かつてない変革期にあるHRM/HCM

 大半の企業は、給与や人事管理システムを自社開発するか、COMPANYや「POSITIVE」「SAP SuccessFactors」「Workday」「Oracle Cloud HCM」などの統合人事アプリケーションやSaaSを使って構築・運用している。しかし、それらだけでは対応しきれないさまざまな変化が進んでいる。例えば従業員は、かつての「日本人、男性、正社員」という状況からダイバーシティマネジメントが当然になりつつあるのは、周知のとおりだ。

 雇用形態も契約や派遣、業務委任などへと多様化し、新卒一括採用から通年採用へのシフトが進む。このほかジョブ型人事制度の広がり、リスキリングのための制度充実、副業/複業の容認、さらにコロナ禍で加速した勤務地の自由化もある。退職者や離職者とのリレーション(アルムナイネットワーク)構築も求められる。人的資本経営という言葉を持ち出すまでもなく、HRM/HCMは現在、かつてないほどの大きな変革期にあるのだ。

 こういった新しいニーズに対応するべく、市場には労務管理や人材開発、採用や求人、タレントマネジメント、福利厚生、従業員エンゲージメントなどの業務をサポートするさまざまなソリューションが登場している。それらはHRTechと呼ばれ、専門サイトの「HR Techガイド」によると、その数は優に1000を超える(関連リンクHRテック カオスマップ 2023年最新版図2)。

図2:HRTechのカオスマップ(出典:Lifeplay)

 となると、一般企業にとっての問題は既存のHRM/HCMシステムとHRTechソリューション群を、いかに適材適所で組み合わせ、全体として進化させていくか=それによって従業員満足を高めるかになる。パトスロゴスはこの点に着目してPathosLogosを開発した。

●Next:コンボジット型で構成するPathosLogosの実体は

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