[事例ニュース]
カメラで認識した来店客の行動に応じてアバターが自動接客、防府市のスーパーマーケットが検証
2023年8月2日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)
スーパーマーケットチェーン運営の丸久(本社:山口県防府市)は、同社店舗のアルク三田尻店でデジタルサイネージ上にアバターや販促コンテンツを表示して購買を促進する実証実験を2023年8月3日に開始する。アバターを生成AIで構築し、アバターからの商品推薦が成功したかを映像から判別してより適切なアバターへと随時改善する。システムを開発・提供した富士通が同年8月2日に発表した。
山口県を中心に、スーパーマーケットチェーンのマルキュウ、アルクなどを運営する丸久。同社は、アルク三田尻店(山口県防府市)でデジタルサイネージ上にアバターや販促コンテンツを表示して購買を促進する実証実験を開始する。アバターは生成AIで構築し、アバターによる商品の推薦が成功したかを映像から判別してより適切なアバターへと随時改善する(図1)。
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個々のアバターを構築するための要素技術として、富士通の「行動分析技術 Actlyzer」を利用する。学習データを準備しなくても、映像から人の行動を認識するAI技術である。スーパーマーケットにおいては、「商品棚に近づいて商品を手に取る」などの購買行動を認識できるという(関連記事:学習データなしに基本動作の組み合わせで人の複雑な行動を認識する技術「Actlyzer」─富士通研究所)。
今回実証するのは、富士通が開発した購買促進AI技術の効果である。店内に設置したカメラの映像から来店者の行動(ある商品棚の前に立ち寄ったり、商品を手に取ったりする行動)を認識し、そこから来店者の興味や購買意欲を分析する。分析結果に合わせて適切なアバターを生成AIを用いて構築し、事前に作成済みの文章を読み上げる形で商品を推薦する。買い忘れの注意喚起、関連商品の提案、商品の魅力を盛り込んだ説明などを、来店者が受け入れやすい内容とタイミングで提示する(図2)。
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生成AIによるアバターの構築にあたっては、来店者の行動や購買特性データをもとに、生成AIに必要なプロンプト(指示文)情報を最適化する。その情報により、生成したアバターの口調や表情などが変化する。商品の推薦が成功したか(接客によって商品の購入に至ったか)を映像から判断し、より高い効果が見込めるアバターへと随時改善していく。
丸久は富士通の協力を得ながら、実証実験の期間を通じて、アバターによる商品推薦の効果や売上への貢献などの有効性を検証する。
富士通は取り組みの背景として、人々の価値観の多様化に伴い、従来の画一的なマーケティングではなく、個々人に寄り添った購買体験の提供が求められていることを挙げる。「カメラ映像を用いた行動分析技術によって来店者の行動や購買特性などの分析が可能になりつつある一方、接客や販促コンテンツの作成に多大なコストや労力がかかることが課題になっている」(同社)。