[調査・レポート]
データの散在/サイロ化、全体アーキテクチャの不在……国内企業のデータマネジメントの課題が浮き彫りに
2023年12月28日(木)愛甲 峻(IT Leaders編集部)
データをビジネスに生かすための継続的な活動であるデータマネジメント。デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やデータドリブン経営に向け、その重要性が高まる中、企業がデータマネジメントにどの程度取り組んでいるかの実態はこれまで十分に明らかにされていなかった。インプレス総合研究所が2023年12月7日に刊行した調査レポート『データマネジメントの実態と最新動向2024』では、国内企業のデータマネジメントへの取り組みをつぶさに調査。データ品質やマスターデータの管理、データ連携/統合、人材・組織体制などさまざまな観点から分析し、実態を明らかにしている。
データマネジメントをテーマにした初回の調査レポートとなる『データマネジメントの実態と最新動向2024』(インプレス刊)。同レポートでは、アンケート調査の結果を基に、企業における取り組みの実態を詳らかにしている。調査結果への分析からは、国内企業におけるデータマネジメントは、その多くが道半ばであることが見えてきた。以下、いくつかの項目をピックアップして紹介する。
約半数の企業で、データが散在し統制が効かない状態に
業務で扱うデータを正確かつ最新の状態に保つためには、重複や表記ゆれなどの修正や名寄せといった作業が必要となる。図1は、そうしたデータ品質の維持・向上への取り組みの状況を尋ねた結果である。「必要に応じて、システム毎に」データの品質を維持・向上する活動を行っているとする回答が39.8%で最も多く、「部門レベルで」が19.2%で続く。一方、「全社レベルで」は17.3%にとどまる。
また、データ品質に関する課題を聞いたところ、「鮮度や精度・粒度が適切でないデータがある」が70.3%を占め、半数以上が「重複データがある」(56.0%)、「どこにどんなデータが存在するのか明確でない」(53.0%)と回答している。
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図2は、マスターデータ(商品、部品、取引先、社員などの元になるデータ)の一貫性を維持するマスターデータマネジメント(MDM)の実施状況を問うた結果である。「特に共通のマスターデータはなく、システム毎に管理している」が30.8%で最多だったが、残り7割は何らかの形でマスターデータの整備・管理に取り組んでいることがわかった。ただし、全社的に整備・利用しているとした回答は20.7%に留まった。
MDMの課題については、半数近く(48.9%)が「既に多くのシステムが稼働しており、一元化や統合が現実的でない」と答えている。
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このように、データ品質の維持・向上やMDMへの取り組みで、多くが部門やシステム単位での取り組みにとどまっており、データマネジメントが全社レベルの活動に至っていない。データ品質やMDMの課題の捉え方を見ても、社内に散在する大量多種のデータを前に、統制が効かない状態で打ち手を欠いている状況がうかがえる。
全体俯瞰のデータアーキテクチャの策定はわずか1割
部門やシステムの単位でデータの管理を続ければ、整合性の面でサイロ化(孤立し連携できない状態)が進み、データの標準化や部門/システムを横断したデータの活用が困難になる。そうした中でデータ品質の維持・向上やMDMなどに取り組もうとしても、労力とコストが膨れ上がる一方である。
こうした事態を防ぐためには、まずは社内に散在するさまざまなデータを可視化し、全社レベルの体系的な管理のためのデータアーキテクチャを策定する必要がある。自社におけるデータアーキテクチャはいわばデータの鳥瞰図・地図であり、そこから全体を俯瞰したうえで各種の取り組みを進めることが有効だ。
しかしながら、データアーキテクチャの策定状況を聞いたところ、策定済みと答えた企業はわずか1割だった。IT部門をはじめとした担当部門・チームは、これをデータマネジメントが全社的な活動に至らない主要因と捉えて前に進める必要があるだろう(図3)。
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以上、『データマネジメントの実態と最新動向2024』における調査結果のハイライトをお伝えした。同レポートでは国内企業におけるデータマネジメントの取り組みの実態や課題を子細に分析しているほか、データマネジメント関連製品・サービスについて、主要ベンダーへの取材を基に動向・ビジネス戦略を解説している。価格(税込み)はCD(PDF)版・電子(PDF)版が11万円、CD+冊子版が12万1000円。購入やサンプルPDFの入手は、インプレス総合研究所のページを参照されたい。