[ユーザー事例]
「データの可視化で終わらずアクションにする」“AI産業革命後”を見据えてデータ経営を推進─関西電力
2024年3月8日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)
関西電力(本社:大阪府大阪市)は、経営環境が変化する中で、“AI産業革命後のビジョン”を策定し、データを経営の意思決定に役立てている。2024年3月8日、日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)、インプレス主催の「データマネジメント2024」のセッションに登壇した関西電力 IT戦略室 IT企画部長の上田晃穂氏は、データを活用するための体制整備、ルール作り、人材育成などの取り組みと、5つのデータ活用事例を紹介した。
“AI産業革命後のビジョン”で関西電力が目指すこと
関西電力でIT戦略室IT企画部長を務める上田晃穂氏(写真1)はセッションの冒頭、関西電力を取り巻く経営環境の変化として、生成AIのインパクトに触れた。2030年頃にAI産業革命が到来することを想定して、同社では、“AI産業革命後のビジョン”を策定している。
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そのビジョンでは、AIによるバリューチェーンの改革や、AIエージェントが支援するオフィスなど、新たなAI時代の経営やワークプレースの姿が描かれているという。同社はすでに、ビジョンの実現に向けた2030年までのロードマップを定めている。
続いて上田氏は、日本の伝統的企業(JTC:Japanese Traditional Company)とAI先進企業(AIFC:AI First Company)の違いを示し、関西電力がAIFCに近づこうとしていると説明。例えば、AIを前提に業務を再構築し、競争優位の源泉とするという。「経営スタイルは計画重視ではなくアジャイルで回す。データは暗黙知を形式知に変える。データの可視化で終わらず、意思決定や行動につなげる」(同氏)。
ルールや体制面でデータ活用の仕組みを構築
関西電力は、IT系のポリシー・ルールとして、データマネジメントのナレッジ集であるDMBOK(Data Management Body of Knowledge)をベースに「データマネジメント通達」を策定している。この中では、ガバナンス(役割、体制、リスク管理、評価)、データマネジメント(ニーズ管理、シーズ管理、収集、加工、蓄積、利用・活用、廃棄)などのルールを記載している。
データマネジメント推進体制は、同社の戦略委員会、各部門とアクセンチュアで共同設立したK4 Digitalの3組織で構成する。データ活用推進人材の育成については、2025年末までの目標として、高度人材が52人、部門での推進者が5700人、全社員中で1万7000人を育成する。
戦略の策定にあたっては、ミッション、ビジョン、バリュー、戦略などの「タテの一貫性」と、組織や人事制度などの「ヨコの整合性」が大事だ、と上田氏。タテの一貫性ではベースとなる組織風土が重要で、例えば、心理的安全性の確保などが求められるという。
変革のためのアクセラレータとして、ジョン・ポール・コッター(John P. Kotter)氏が提唱する8段階の変革プロセスにも取り組んでいる。危機意識を高め、チームを築き、ビジョンと戦略を生み、ビジョンを周知徹底し、従業員の自発を促し、短期的成果を実現し、さらなる変革を推進し、新しい方法を企業文化に定着させる、というステップである。
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