[市場動向]

日立とマイクロソフト、生成AIの社会実装に向け、今後3年間で数十億ドル規模の協業

日立製品へのAIの組み込み、AI活用/人材育成などを推進

2024年6月5日(水)IT Leaders編集部

日立製作所と米マイクロソフトは2024年6月4日、生成AIを活用した社会イノベーションの推進を目的に、今後3年間で数十億ドル規模の協業を行うと発表した。日立は、マイクロソフトのAIサービス群を「Lumada」などの自社製品・サービスに組み込むほか、日立グループ27万人の生産性向上に向けた取り組みを行う。日立の人材育成プログラムにマイクロソフトの研修を組み込み、生成AI人材「GenAI Professional」を5万人以上育成するという。

 日立製作所と米マイクロソフトは、生成AIを活用した社会イノベーションの推進を目的に、大きく以下の4点について、今後3年間で数十億ドル規模の協業を進める。日立は生成AI分野に、2024年度で3000億円(21億ドル)の成長投資を行うとしている。

(1)日立における、マイクロソフトのAI技術・サービスを組み込んだ製品・サービスの開発
(2)日立社内におけるAI活用の推進
(3)日立社内におけるAI人材の育成強化
(4)環境負荷低減など持続可能な成長を目指した共同プロジェクト

 (1)において、日立はすでにシステム運用管理ツール「JP1 Cloud Services」で、マイクロソフトの生成AIを活用したサービスを提供し、金融・公共・製造などのIT部門によるシステム障害対応の初動迅速化や運用効率化を見込んでいる。日立によると、JP1 Cloud Servicesの社内実証では、アラートへの対処方法を生成AIが回答し、根拠となるマニュアルなどの引用元を表示するなどで、運用担当者による初動の判断時間を約3分の2に短縮する効果を確認したという(図1)。

図1:JP1 Cloud Serviceにおける、生成AIアシスタントによる運用効率化・自動化の将来像(出典:日立製作所)
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 日立とマイクロソフトは今後、生成AIの適用範囲を広げるべく、新たにエネルギー業界に向けて、アセットパフォーマンス管理、エネルギー取引、リスク管理などの機能を強化するとしている。

 (2)では、日立の生成AI推進組織「Generative AIセンター」がマイクロソフトと連携して、「Copilot for Microsoft 365」による業務効率化、「GitHub Copilot」によるアプリケーション開発生産性向上、「Azure OpenAI Service」による顧客サービスの高度化を推進していく。

 アプリケーション開発においては、Azure OpenAI ServiceやGitHub Copilotを、日立のシステム開発の知見と共に活用し、ミッションクリティカルシステムにたえる品質を維持しつつ生産性を向上させるとしている。日立が蓄積した詳細設計情報を入力した社内検証では、アプリケーションのソースコードを70~90%のレベルで適切に生成でき、高品質なアウトプットが得られることを確認したという。

 日立グループで鉄道事業を営む日立レールでは、機器監視の強化や予測精度の向上による予知保全などを目的に生成AIを活用する。安全性を強化しながら、故障を減らしてサービス品質の向上と運用コストの削減を図るとしている。同社は鉄道インフラの監視システムをAzure上に構築し、AIによるデータの可視化・分析から洞察を得られることを確認している。なお、英国の大手鉄道システム運営会社Network Railは、日立レールの事例をベースにしたプロジェクトを進め、架線の予知保全に関する意思決定プロセスを強化できたという。

 (3)において日立は、生成AIのスキル・ノウハウを有した人材「GenAI Professional」の育成プログラムに、GitHub CopilotやAzure OpenAI Serviceを活用したソフトウェア開発スキルを習得する研修などを取り入れる。5万人以上のGenAI Professionalを育成する目標を掲げている。

 (4)の共同プロジェクトにおいて日立は、マイクロソフトとの持続的なイノベーションを目指して日立グループのサービス群を強化する。また、AIシステムに起因する環境負荷の低減に向けて、欧州でのデータセンタープロジェクトをはじめとし、ゼロカーボンに向けて取り組むとしている。

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