ガートナージャパンは2024年8月21日、「日本におけるデジタル・ワークプレース・イノベーションのハイプ・サイクル:2024年」を発表した。デジタルを前提にした、より良いワークプレイスの実現にとって重要なテクノロジーやトレンドを取り上げている。2024年に新たに追加したテクノロジーの中で、エモーションAIが「『過度な期待』のピーク期」に位置している。
米ガートナー(Gartner)のハイプサイクル(Hype Cycle)は、テクノロジーやサービス、関連する概念、手法などの項目の認知度や成熟度を視覚的に示したグラフである。テクノロジーが普及するまでに必ず通過する5つの時期をハイプカーブと呼ぶ曲線で表し、各項目が現在どの時期にあるのかを示している。
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今回ガートナージャパンが発表した「日本におけるデジタル・ワークプレース・イノベーションのハイプ・サイクル」(図1)は、デジタルを前提にした、より良いワークプレイス(働く場所、業務環境)の実現にとって重要なテクノロジーやトレンドを、(1)ワークプレイスインフラストラクチャの近代化、(2)人や組織のあり方、(3)人材育成、新たな働き方を支えるもの、(4)新興技術、DX関連の各観点で取り上げている。
同社はデジタルワークプレイスについて、「いつでもどこでも柔軟に働き、テクノロジーや適切なアプローチで仕事の質や生産性、俊敏性を高めるデジタルな仕事空間を指す。単なるデジタル化とは異なり、人や組織のあり方も含めた企業の成長や革新戦略の一環として実現するもの」と説明している。
2024年版のハイプサイクルに追加した新たなトレンドの中では、AIがユーザーの感情状態を分析する「エモーションAI」を「『過度な期待』のピーク期」に位置づけている。「エモーションAIにより、コンピュータが人の気分に合わせて特定のアクションを取ることが実現する。人と人あるいは人とマシンのコミュニケーションを促進する可能性がある」(同社バイスプレジデント アナリストの池田武史氏)。
また、「AIリテラシー」を「黎明期」に追加している。そこには、単にAIを使いこなす能力だけでなく、AIのネガティブ・インパクトやリスクなどの知識や理解、AIの実行能力も含まれるという。「AIリテラシーは、AIとの共生が当たり前となる時代において、新たなビジネス価値の創造や産業革命クラスの変化への対応に不可欠。企業は従業員のAIリテラシーを高める取り組みを進める必要がある」(同社ディスティングイッシュト バイスプレジデント アナリストの亦賀忠明氏)。
ガートナーは、「多くの企業で日常的なハイブリッドワークを受け入れつつ、さらに進んだ未来の働き方を再考する機会が到来している」と指摘している。
「かつてない時代変化の中、企業はデジタルテクノロジーを戦略に組み込み、自社の働く場、すなわちワークプレイスを短・中・長期的な視点で進化させる必要がある。生成AIやさまざまなテクノロジーには人の働き方を大きく変える可能性がある。企業はテクノロジーを駆使して、ワークスタイルを時代に合うものへ変化させ、さらなる成長や持続可能性を目指すことが求められる」(同社ディレクター アナリストの針生恵理氏)