[事例ニュース]
auカブコム証券、開発環境の構築をIaCで自動化、工数を2週間から1日に
2024年11月26日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)
auカブコム証券(本社:東京都千代田区)は、システム開発環境の構築作業を自動化し、ビジネスニーズを素早くシステムに反映する体制を整えた。IaCで自動化ツールを使って環境構築を自動化したほか、構築手順を明確化し、インフラ管理チームに頼ることなく開発チームみずから環境を準備できるようにしている。同社の取り組みを支援したウルシステムズが2024年11月26日に発表した。
auカブコム証券は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とKDDIのジョイントベンチャーである(関連記事:KDDIと三菱UFJフィナンシャル・グループ、金融特化LLMなど生成AIの開発・活用で協業を強化)。
システム面では内製化が特徴で、開発品質の維持や、ビジネスニーズを俊敏にシステムに反映させることなどを狙い、先進技術の導入や開発業務の改善・効率化を継続的に進めている。
開発効率化の一環で今回着手したのが、開発環境を構築する作業の効率化である。同社の基幹業務システムは、構成要素が緊密に連携する、いわゆるモノリシックな構成をとるため、機能の追加や変更を行う際はシステム全体を再現した開発環境を用意する必要があった。
開発環境の構築は、構成要素が多く、手作業が大半を占めるため、インフラ管理チームにとって、負担の大きな作業だった。複数の業務を担当しており、開発チームの要望に即座に対応できない点も課題だったという。
一方、ビジネスニーズや法制度への対応を背景に、開発プロジェクトは急増。構築手順を抜本的に見直し、開発環境を短期間で調達する仕組みを整える必要があった。こうしてauカブコム証券は、ウルシステムズに技術支援を要請し、開発環境の構築作業を2ステップで効率化した。
第1ステップとして、基幹業務システムを読み解き、それぞれの機能が動作するために必要な最小限の構成を明らかにした。環境構築の対象を絞り込むことにより、作業工数を2週間から1日に短縮。また、手順を明文化することで、開発チームがインフラ管理チームに頼らず環境を構築できるようにした。
第2ステップでは、環境構築の自動化を進めた。環境構築の手順をひも解き、ブラックボックス化・形骸化しているものを除去し、シンプルかつ最短経路でそれぞれの構成要素を再現する手順を確立した。利用頻度の多い構成については、IaC(Infrastructure as Code)ツールを用いて手順をコード化し、構築作業を完全自動化している。
新しい仕組みは、2023年6月にリリースし、安定的に稼働している。IaCで環境構築の負荷を軽減したことで、同時並行できる開発プロジェクトの数を増やし、サービス強化のスピードを高めた。変更対象機能に合わせた必要最小限の環境を用意することにより、インフラコストも低減しているという。