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京大病院、希少疾患の潜在患者を予測するAIモデルの性能を電子カルテデータで検証

2024年12月9日(月)日川 佳三(IT Leaders編集部)

京都大学医学部附属病院(京大病院)は2024年12月9日、希少疾患である遺伝性血管性浮腫(HAE)の潜在患者を予測するAIモデルの有用性を、同病院が保有する電子カルテデータで検証した結果を発表した。AIモデルは、日本IBMと一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(DISCOVERY)が構築した。2022年12月に検証を開始し、成果を2024年9月に学術誌『JMIR Medical Informatics』で発表している。

 京都大学医学部附属病院(京大病院)は、希少疾患である遺伝性血管性浮腫(HAE)の潜在患者を予測するAIモデルの有用性を、同病院が保有する電子カルテデータで検証した。検証は2022年12月に開始したもので、検証成果は2024年9月に学術誌『JMIR Medical Informatics』で発表している(図1)。

図1:集団全体に対してHAE患者予測モデルを適用したイメージ(出典:京都大学医学部附属病院、日本IBM、一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム)

 AIモデルは、日本IBMと一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(DISCOVERY)が構築した。DISCOVERYは、2021年2月、HAEと診断されずに症状に苦しむ患者のために、医療従事者、患者団体、製薬企業を中心に発足したコンソーシアム。適切な早期診断と診断率の向上を目指す取り組みの一環として、医療データをAIで分析するワーキンググループを立ち上げ、HAEの潜在患者を予測するAIモデルの開発に取り組んできた。

 「HAEの治療研究では、希少疾患という特性上、AIモデルの構築にあたって、よりデータ量が多い米国電子カルテ・レセプトデータを利用してきた。一方、国内医療機関への適用にあたっては、国内の電子カルテデータでの検証が必要だった」(京大病院)。これを受けて、同病院が保持している電子カルテデータにHAE患者予測AIモデルを適用し、適用結果の予測精度やHAEリスクが高いと提示された患者の傾向などを評価している。

 HAEは5万人に1人の有病率とされている。検証では、HAEの可能性が高いとAIモデルが予測して抽出した患者グループにおいて、約5人に1人の割合でHAEの確定診断またはHAEの疑いがある旨の記録がなされていたという。「この結果から、これまでHAEの診断記録がない患者においても、同AIモデルの適用結果を活用することによって、HAEの早期診断に寄与しうると考えられる」(京大病院)。

 同研究の統括責任者である京大病院血液内科准教授の山下浩平氏は、次のようにコメントしている。「HAE患者予測AIモデルは、海外の電子カルテ・レセプトデータを基に構築したモデルで、国内の電子カルテへの適用性が懸念されていた。今回の研究によって一定レベルの有用性を評価できた。本来HAEを疑うべき患者も抽出されており、潜在患者の発見に貢献しうる」。

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