経済産業省は2025年2月18日、ガイドライン文書「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」を公開した。ユーザー企業に向けた全44ページのPDF文書である。生成AIの活用を促すことを目的に、企業が実務上使いやすい形式でまとめたとしている。AI活用の実務経験は問わず、法務部門や事業部門など、幅広い利用者を想定している。
経済産業省は、「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」を公開した。全44ページのPDF文書として提供する。ユーザー企業に生成AIの活用を促すことを目的に、ITベンダーが提供するAI関連サービスの検討・導入・利用のポイントをまとめている。AI活用の実務経験は問わず、法務部門や事業部門など幅広い利用者を想定している(表1)。
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契約チェックリストの作成にあたっては、「AIサービス利用者がサービス提供者に対して提出するデータの利用範囲や契約上のベネフィット(サービスの水準、AI生成物の利用条件など)について検討するために必要な基礎的な知識を記載すること」と「データの不適切な利用などを避けるためにサービス利用者が契約時にチェックすべきポイントを具体的に記載すること」を考慮したという。
内容として、チェックリストの対象となるAI関連サービスのユースケースと契約類型の説明、AIシステムへのインプット(テキストや映像などの情報)とアウトプットの双方に関する具体的なチェックリスト、チェックリストを活用するうえでの留意点(インプットの提供、開発型、個人情報保護、セキュリティ)などの項目で構成する(図1)。
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インプットに関するチェックリストは全37項目。「ベンダによるインプットのサービス提供目的以外の利用が認められているか」「ベンダがインプットを管理する義務を負うか」「ベンダがインプットに関して、知的財産権等一定の権利を取得するか」などがある。
アウトプットに関するチェックリストは全29項目。「ベンダがアウトプットを完成する義務を負うか」「ユーザがアウトプットを第三者に対し提供できるか」「ユーザがアウトプットに関して、知的財産権等、一定の権利を取得するか」などがある。
経産省は、契約チェックリスト公開の背景を次のように説明している。「2022年頃から生成AIを用いたサービスが急速に普及し始め、AIモデルの開発だけでなく、利活用の局面における契約の重要性が高まっている。事業活動でAIを利活用したい事業者が増えている一方で、AIの技術や法務に必ずしも習熟していない事業者が導入を検討するケースも増えている」。
踏まえて同省は、AIサービスを活用する際の契約実務に関して、「AIの利活用に関する契約に伴う法的なリスクを十分に検討できていない可能性」や「保護されるべきデータや情報が予期せぬ目的に利用され、また第三者に提供される等、想定外の不利益を被る可能性」といった懸念を挙げている。こうした懸念を解消するためにチェックリストを作成・公開したとしている。